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スイス中銀が突然の為替上限撤廃。ECB量的緩和策直前という最悪のタイミング

 

 スイスの中央銀行にあたるスイス国立銀行が、自国通貨高を抑制するための為替上限を撤廃したことで、市場が動揺している。混乱は一時的である可能性が高いが、ECB(欧州中央銀行)が量的緩和策に踏み出す直前というタイミングだっただけに、今後の金融政策に冷や水を浴びせる形となった。

 swissnb スイスは、プライベートバンクをはじめとする高度な金融サービス業や高級時計に代表される高付加価値製造業が基幹産業であり、低迷が続く欧州の中では例外的に堅調な経済を維持してきた。また、ユーロに参加せず、独自の通貨であるスイスフランを採用していることもあり、同通貨はユーロに対する安全資産と認識されている。このため欧州債務危機などユーロに対する信認が低下すると、スイスフランが買われるという状況が続いてきた。

 過度なスイスフラン高が続くと、製造業は相対的に不利になってしまうことから、スイス中銀は、1ユーロ=1.2スイスフランという為替上限を設定し、これ以上の通貨高になった場合には、無制限にユーロ買いの介入を実施する方針を明らかにしていた。
 自国通貨買いの介入には限度があるが、自国通貨売りの介入は、理論的には無制限に実施が可能であり、この為替上限策は万能と思われた。実際、この措置を発動して以降、3年間は為替は安定的に推移してきた。

 だが、このところ欧州の景気低迷が顕著になり、ECBが量的緩和策の実施に踏み切ることがほぼ確実になってきたことから、状況が変化し始めた。為替市場において、スイスフラン買いが殺到し、再び大量のスイスフラン発行を迫られる状況になったのである。

 スイス中銀はこれまでの為替介入によって大量のユーロを保有しており、中銀のバランスシートは大幅に拡大している。同行の外貨保有高は2009年時点では946億8000万スイスフランだったが、2013年末には5倍近くの4432億7500万スイスフランとなっている。これに伴って同行のバランスシートの規模も2倍以上に膨れ上がった。

 同行としては、為替介入のために必要な措置とはいっても、今後、価値が減価することが分かっているユーロをこれ以上抱え込むわけにはいかないという判断に至った可能性が高い。逆にいえば、ECBによる量的緩和策の影響の大きさをスイス中銀が強く意識していた結果ともいえる。さらに言えば、量的緩和策が始まってからでは、タイミングを逸してしまうという焦りがあったのかもしれない。

 ただ、ECBが量的緩和策に踏み切る直前に、しかも事前のアナウンスなしの決断は少々稚拙だった。IMF(国際通貨基金)のラガルド専務理事も、事前の相談がなかったことについて苦言を呈している。実際、為替市場はもちろんこと、各国の株式市場にも大きな動揺を与える結果となってしまった。

 スイスは金融立国とはいえ、GDPが76兆円程度の小国である。今回の措置が直接市場に影響を与える範囲は限定的だろう。むしろ重要なのは、ECBの量的緩和策が米国のようにうまく機能するのかという市場の疑問を、スイス中銀の拙速な行動がはからずも顕在化させてしまった点にある。今回の騒動は、今後、再燃するかもしれない欧州危機の予兆なのかもしれない。

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