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32人ゴボウ抜きの三井物産社長人事。だが、どうしてもぬぐい去れないある疑問

 

 三井物産は2015年1月20日、飯島彰己社長が4月1日付で退任し、安永竜夫執行役員が昇格する人事を発表した。安永氏は副社長以下32人をゴボウ抜きする形で社長に就任する。
 掛け声とは裏腹に、なかなか若手の登用が進まない日本の企業社会において、今回の人事は思い切った決断と高く評価されている。しかし、一方で、コーポレート・ガバナンスという観点からどうしても気になる点が残った人事でもある。

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 安永氏は東京大工学部卒業後、1983年に三井物産に入社。主にプラント畑を歩み、2013年から執行役員として、輸送システム本部長に就任している。
 同社は、2014年6月、取締役でない人物でも社長に就任できるよう定款変更を行った。これは社長候補を若手にも広げるための措置という主旨であり、安永氏はその第1号ということになる。

 企業は、株主から経営を委託された取締役が経営に関する全責任を負う。取締役はすべて対等であり、各人がそれぞれそ、会社に対する経営責任を負っている。一方、取締役会から指示を受け、実際に業務を執行する人物は、CEO(最高経営責任者)以下、ピラミッド型のヒエラルキーになっている。

 こうした所有と経営、さらには執行の分離を徹底し、それぞれの責任範囲を明確にしている企業では、経営者である取締役と、経営者から指示を受ける執行役は完全に分離し、両者を兼ねるのはCEO(最高経営責任者)などごく少数のみというケースが多い。

 しかし日本の場合には執行と経営が明確に分離されておらず、執行側の上席者の多くが取締役を兼務するケースが多い。こうなってくると、本来、対等な責任を持つはずの取締役会が機能しなくなってくる。取締役として対等でも、自分の執行上の上司である社長から決議への同意を強要されれば、反対することは難しい。

 今回のケースでは、社長の安永氏は取締役ではない。つまり同社の経営者ではないのである。経営者ではない人物が、執行のトップに就任することになると、経営責任は誰が追うのかという疑問が出てくる。
 また、同社の取締役には、執行上、安永氏の部下となる人が多数就任している。安永氏は自分の部下から経営上の指示を受けるという形になってしまう。同社の社外役員には経営学の重鎮である野中郁次郎氏も就任しているが、取締役会がこの人事に対してどのような反応をしたのか興味のあるところだ。

 現実には、安永氏は6月の株主総会で取締役に就任するはずであり、その時点でこの問題は解消される。だが、そのためにわざわざ定款を変更し、総会前に取締役ではない人物をあえて社長に就任させる人事を行ったという事実は、市場に対して誤ったメッセージを送りかねない。

 定款変更と社長就任、その後の株主総会による取締役就任という、一連の手続きに形式的不備がないこととはまた別の問題である。会社法の上位に存在する基本的な理念という点において、やはり疑問が残る。もしそれが、4月人事といった社内事情を最優先した結果なのだとすると、なおさらである。

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