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ヤマト運輸と政府のバトルが再び勃発。郵政上場でも、まったく状況は変わらず

 

 郵便事業をめぐるヤマト運輸と政府のバトルが久々に復活した。ヤマト運輸は2015年1月22日、クロネコメール便を3月31日で廃止すると発表した。
 メール便をめぐっては、日本郵便にだけ認められている「信書」の送付にあたるとして、ヤマト運輸だけでなく、その利用者まで郵便法違反の疑いで捜査される事例が発生。同社は利用者の安全を確保できないと判断した。

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 ヤマト運輸は、故小倉昌男会長の時代、宅配便の規制をめぐって旧郵政省などと壮絶なバトルを繰り返してきた。日本郵政は今年中に株式の上場を予定しており、民営化の最終段階に入りつつある。だが、今回の事例が示すように、民営化とは名ばかりで、国家独占事業の形態はまったく変わっていない。

 現在、郵便法によって「信書」の送付は日本郵便だけに認められている。信書の定義は「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、または事実を通知する文書」というものだが、何が信書で何が信書ではないのか判断する基準は極めて曖昧である。

 履歴書を企業に送るのは事実の通知が含まれるので信書に該当する。このため履歴書の送付にメール便を使うと、理屈の上では、違法行為として摘発される。一方で、企業から履歴書を返送するのは信書にあたらないため、メール便を使っても罰されることはない。このような馬鹿げた基準を把握できる利用者などいるはずもなく、最近では管轄する総務省に問い合わせても、明確な解答を得られないケースも出てきている。

 その一方で、郵便法に違反しているとして、警察から事情聴取を受けたり、検察に書類送検されるケースが2010年までに79件も発生している。何が信書に該当するのか明確な解答ができないにもかかわらず、捜査だけは行うという状況になっているわけだ。ヤマト運輸では、この状況を不当な措置と主張しているが、利用者が逮捕されてしまうという状況を避けるため、やむなくメール便の廃止を決断した。

 もっとも、ヤマト運輸にとっても、個人向けメール便の採算が悪いという事情がある。同社では、企業のDM送付などを目的とした類似のサービスを4月1日に開始する予定であり、今回の措置は、実質的な企業向けサービスへのシフトであるとの指摘もある。
 ただ同社としては、個人向けにメール便のサービスを提供するメリットが少なくないことを考えると、同社の主張はおおむね額面通りに解釈してよいだろう。

 日本郵政グループは、今年中に株式を上場することを前提に準備を進めており、形式上は民営化が着々と進んでいる。だが、今回のヤマト運輸のケースを見ても分かるように、国家独占事業的な体質は何も変わっていない。株式上場も、財源を確保したい政府の意向を最優先した結果に過ぎない。

 同グループは親会社と子会社が同時上場となるため、コーポレートガバナンス上、問題があると指摘する声も出ている。だが民営化における根本的な部分で問題が解決されていない現状を考えると、ガバナンス上の不備など、そもそも大した話ではないのかもしれない。

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