ニュースの教科書

ジャーナリストが記事にできないホンネやつぶやきを集めた脱力系ニュースサイト

タイの鉄道建設プロジェクトを巡る日中の地政学的争い。今のところ中国有利?

 

 日本が支援する予定のタイの鉄道建設プロジェクトが騒がしくなっている。タイ軍事政権のプラユット首相は2月にも来日し、安倍首相に対してプロジェクトへの協力を打診する予定。一方でタイは中国政府と高速鉄道プロジェクトについてすでに合意しており、日本の支援がどれほど効果があるのか疑問の声も上がっている。

indosina

 現在、日本政府はタイ政府と、インドシナ半島を横断する鉄道計画について協議している。タイは日本の製造業がもっとも積極的に進出している地域だが、タイの西隣にはミャンマーが、東隣にはラオスとカンボジア、海側にはベトナムがある。これらの国はまだ開発途上であり、今後の発展余地が大きい。
 日本としては、ベトナムからラオス、タイを経由してミャンマーに抜ける交通インフラが整備されれば、南シナ海からインド洋までが連結されることになり、一体のエリアとしてサプライチェーンを構築できることになる。このルートは「東西回廊」と呼ばれる。

 一方、中国はインドシナ半島を縦断するルートの開拓を行っている。中国はラオスと共同で、雲南省の昆明からビエンチャンを結ぶ高速鉄道建設計画を進めている。
 中国は同時に、タイ国内において、ラオス国境のノンカイから首都バンコクを経て、タイ湾(南シナ海)に至る鉄道建設計画も推進している。ビエンチャンとノンカイは目と鼻の先なので、これが実現すると、中国内陸部からバンコクまで一気に高速鉄道でつながることになるが、これは東西回廊に対して南北回廊と呼ばれている。

 中国や欧米列強による植民地支配が長かったASEAN各国は、こうした地政学的な動きに敏感である。かつて大英帝国はアフリカ大陸を南北に展開し、フランスは東西に展開したが、最終的には英国の戦略が功を奏した。ASEAN各国では、タイの鉄道開発を日中による地政学的な争いと認識しており、どのような形で決着するのかに注目している。

 現地メディアの報道によると、今のところ日本側は不利な状況に置かれているようだ。タイ国内で先行しているプロジェクトは、中国と共同で行う南北回廊の高速鉄道開発であり、この鉄道開発にはすべて中国の技術が採用される。日本が協議を進めている東西回廊開発の優先順位は低い。

 今回、プラユット首相が来日して鉄道計画について支援を要請するのは、日本のメンツをつぶさないようにする配慮だとの報道も目立つ。
 プラユット氏の来日で鉄道計画は合意に達する可能性が高が、この計画は、インドシナ半島における日本のプレゼンス向上にはあまり役立たないだろう。日本の資金提供で鉄道建設を行うことで、日本企業の売上げを確保するという、産業政策的側面が目立つ結果となりそうだ。

 - 政治, 経済 , , ,

  関連記事

matsuishouken
松井証券がとうとう金利も手数料もゼロ円という自爆価格を設定。どうやって儲けるの?

 信用取引に関する来年1月の規制緩和をうけて、ネット証券業界では自爆テロともいえ …

tosho05
日本の株式市場が賭博場になったのは、企業のダブルスタンダードが原因?

 持続的な成長を実現するために、企業と投資家の間にどのような関係が必要なのかにつ …

foxconn02
シャープに拒絶された鴻海が日本に開発拠点を設立。シャープ技術者の採用に乗り出す

 経営再建中のシャープに出資を検討したものの、最終的にはこれを断念した台湾の鴻海 …

senkaku
米議会が尖閣諸島を安保対象とする法案を可決。だが日本にとっては大したメリットはない

 米上院は4日、本会議において、2013年度(2012年10月~13年9月)国防 …

f1
ギリシャ政府がF1への補助金にゴーサイン。政治家と役人だけがオイシイ思いを満喫?

 ギリシャ政府が、F1サーキットの整備計画に3000万ユーロ(約30億円)の補助 …

yudachi02
中国軍幹部がレーダー照射を認める。軟化のサインか心理戦か?

 中国海軍の艦船が海上自衛隊の護衛艦にレーダーを照射した問題で、中国軍の高級幹部 …

no image
もの作り革命の本「Makers」が早くも話題に。だがそれは日本の3回目の敗北を意味する

 『ロングテール』や『FREE』といったネットにおける新しいビジネスモデルをいち …

mitsuishacho
32人ゴボウ抜きの三井物産社長人事。だが、どうしてもぬぐい去れないある疑問

 三井物産は2015年1月20日、飯島彰己社長が4月1日付で退任し、安永竜夫執行 …

kishidaputin
一筋縄ではいかない日露交渉。プーチン大統領は意図的な遅刻で日本側を翻弄?

 岸田文雄外務大臣はロシアのプーチン大統領らとモスクワで会談し、今月に開催される …

cameron2
先週はオランド大統領、今週はキャメロン首相。欧州首脳が相次いでインドに売り込み

 英国のキャメロン首相は18日、インドを訪問した。首相としては2度目のインド訪問 …