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通貨高でもスイスの時計輸出は絶好調。かつての日本もそうだった

 

 スイスの2014年における時計輸出額が過去最高を記録した。スイスの中央銀行は2015年1月、自国通貨高を抑制するための為替上限を突然撤廃し市場が動揺。1日に30%以上も為替が変動するという事態になった。
 スイス中銀は時計に代表されるスイスの輸出産業を守るために通貨高抑制措置を採用してきたわけだが、通貨高にもかかわらず、スイスの時計輸出は堅調だったことになる。スイスの事例は、かつての日本経済がそうだったように、通貨高が必ずしも輸出競争力の低下につながるわけではないことを示している。

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 スイス時計協会は2015年2月3日、2014年における時計の輸出額が222億4730万スイスフラン(約2兆8165億円)と過去最高を記録したと発表した。最大の販売先である香港がほぼ横ばいで、中国向けは3.5%のマイナスとなった。だが、米国向けが6.2%の増加となったほか、日本などその他地域の販売が伸び、全体の輸出額を押し上げた。

 スイスフラン高は、2010年頃から始まり、2011年6月に一旦ピークを付けている。スイス中銀は2011年9月に、1ユーロ=1.2スイスフランという為替上限を設定し、これ以上の通貨高になった場合には、無制限にユーロ買い介入を実施する方針を明らかにしていた。
 自国通貨売りの介入は、理論的には無制限に実施が可能であり、実際、この措置を発動して以降、スイスフラン高は止まり、その後は、高値で安定的に推移してきた。

 一方、時計の輸出額は、2011年は19.4%増、2012年は11.0%増と通貨高になっても堅調な推移を見せてきた。2013年以降は1%台と伸び率が低下したが、世界的な需要低迷が大きく影響しており、為替変動が直接的な要因ではない。

 かつて日本は1985年のプラザ合意をきっかけに急激な円高に見舞われることになった。日本円は3年の間に250円から130円まで一気に2倍近く値を上げた。だが輸出は3年間で2割程度しか減っておらず、その後は逆に、輸出を急拡大させている。
 輸出は為替からも影響を受けるが、最大の要因は、何と言っても国際的な需要とその製品の本質的な競争力である。国際的な需要が堅調で、製品の付加価値が高ければ、為替変動で多少値上げを行っても、大きく販売が減ることはないのだ。

 スイスは日本の時計メーカーによる猛烈な輸出攻勢を受け、一時は大きな打撃を受けた。だが、差別化を図るため、超高級路線に転換。世界的な景気拡大による富裕層増加の恩恵を受け、業績を伸ばすことに成功した。スイスの時計はブランド価値が高く、値上げを行っても大きく販売台数が落ち込むことはない。同国の時計産業にとって為替は不安要素のひとつではあるが、世界景気低迷の方がはるかに大きな影響となるだろう。

 日本では輸出産業の競争力について、とかく為替を基準に議論しがちである。だが、実際には為替はそれほど大きなファクターではなく、むしろ製品そのものの付加価値の方が重要である。日本の過去の歴史とスイスの現状は、この事実を如実に物語っている。

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