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東大生の親は金持ちという統計学者の投稿が話題。議論の本質はどこにあるか?

 

 東大生の親の6割が年収950万円以上というツイッターの投稿がネットで話題となっている。一部では、教育格差絶望社会などと騒がれているが、この傾向はかなり以前から変わっておらず、特段驚くべきことではない。むしろ問題なのは、一流大学に行くことしか社会的に成功する道がないという、多様性のなさにあると考えられるが、こうした議論は少ない。

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 この投稿は、教育社会学者の舞田敏彦氏が行ったもの。舞田氏によれば、東大生の57%が親の年収が950万円以上であったという。40代から50代の世帯のうち、950万円以上の年収がある世帯の割合は21.8%なので、東大生の親は突出して金持ちだということになる。
 舞田氏は、幼少期からの通塾や早期受験をはじめとした、教育投資の差が出ている可能性が高いと指摘している。これは各種統計データから導出されたものなので、かなり確度の高い結果と考えてよいだろう。

 この結果は特段目新しいものではなく、20年以上も前から指摘されてきたことである。今も昔も、一流大学の学生の親は高所得者が多い。高所得者は金銭的に余裕があるので、子弟に対して多くの教育費をかける可能性が高く、こうした結果になることは容易に想像ができる。

 一部からは、格差社会を助長するとの声も出ているようだが、こうした議論で抜け落ちている点がある。一流大学を卒業した人と、そうでない人との間に根源的な格差が生じるということは、多くの日本人が、一流大学を出た人を特権的に扱うということについて是認しているということになるが、この考え方が正しいのかどうかという問題である。

 学歴が何を意味しているのかという解釈には2種類あるといわれている。ひとつは獲得したスキルの証明であるという解釈。もうひとつは、将来のポテンシャルを証明するという解釈である。
 日本以外の国は、学歴を獲得したスキルの証明とする傾向が強い。経済学を学んだ人は、経済学の知識があるので、その専門家として、相応の給与で雇用される。だが、その後のキャリアについては、そこからの競争となる。一方、日本の場合は、何を学んだのかはあまり関係なく、どの大学だったのかが重要となっている。いい大学を出れば、その後、実際に競争させなくても、高い能力を発揮することが分かっているということになる。

 単純な製造業の時代には、日本式の解釈もうまく機能した。業務内容は単純であり、基礎学力と仕事の能力がほぼ一致していたからである。だが、新しい付加価値を作り出す必要がある現代社会においては、学力は最低限の仕事の能力しか担保しない。本来は、そこから競争を行い、適性のある人物を選抜する必要があるが、日本の雇用システムは今のところそうなっていない。

 高学歴者が無条件で好待遇を受けるというシステムについて、その恩恵を受けている人もいない人も、これを所与の条件として受け入れている現状を考えると、日本型の選抜システムが今後、大きく変わる可能性は低いと考えられる。
 だが、このような硬直化した日本の選抜システムが、日本の国際競争力低下に大きく影響している可能性はかなり高いと考えた方がよいだろう。

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