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円安と直接投資の増加で経常収支が改善。急がれる国内産業構造の転換

 

 財務省は2015年2月9日、12月の国際収支を発表した。最終的な国の収支を示す経常収支は1872億円の黒字となった。黒字は6カ月連続となっており、円安による海外からの投資収益増加で経常収支が改善する傾向がはっきりしてきた。

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 国際収支は、簡単に言えば、貿易収支に投資から得られる収益を加えたものである。12月の貿易・サービス収支は7298億円の赤字であった。前年同月よりも赤字幅が縮小しているものの、日本は慢性的な貿易赤字体質となっており、この傾向は今後も続くと考えられる。

 一方、海外への投資から得られる収益(所得収支)は、円安によって外貨資産の残高が増加していることや、海外への直接投資が増えたことなどによって増加傾向にある。12月の第一次所得収支は1兆173億円で黒字幅が拡大している。これに第二次所得収支を加えた最終的な収支である経常収支は1872億円の黒字となった。

 成熟国が貿易赤字になることはよく知られている。国内の需要を満たす製品のうち、低付加価値なものを国内で生産していては採算が取れないからである。GDP(国内総生産)成長率と経常収支は直接関係することはなく、経常収支がどのような状態であれ、経済成長することは可能である。
 だが経常収支の変化は貯蓄率の変化など、国内の資金移動の変化を意味しており、その変動幅はなるだけ穏やかな方がよい。経常収支の変化に合わせて、スムーズに国内経済の仕組みを変革することが重要となってくる。

 その意味で、円安と直接投資の増加による所得収支の増加はプラスの効果をもたらす。所得収支が増えれば、変化のスピードを緩和させることができるからである。このところ原油価格が急落しており、来月あたりからは原油価格下落による輸入金額が減少も期待できる。経常収支の変化はさらに穏やかなものとなるだろう。

 短期的には海外の投資で得た収益をどれだけ国内に還流させるのかによって国内経済への影響は大きく変わってくる。12月は直接投資から得られた利益のうち半分が現地に再投資されているが、半分は国内に還流している。還流した利益が、賃金や株主への配当という形で国内経済に出回れば、内需を押し上げることになる。もっとも、現地法人の事業が伸びている時には、現地に再投資する方が企業としては合理的であり、最終的には全体のバランスで還流額が決定される。

 海外からの投資収益がすぐに減る可能性は低く、日本にとっては安定した収入源となる。この間に、海外からの収益が有効な国内需要として機能するよう、国内の産業構造の転換を進めていく必要があるだろう。

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