ニュースの教科書

ジャーナリストが記事にできないホンネやつぶやきを集めた脱力系ニュースサイト

大手メーカーによる下請けへの支払サイト延長措置。経済全体に悪影響はないか?

 

 大手電機メーカーの支払いサイト(下請けなどに代金を支払うまでの期間)が長くなっている。支払いサイトを長くすれば、発注側の大企業の資金繰りはラクになるが、下請け企業の経営は苦しくなる。また経済全体で見た場合も、マネーの循環が滞るというマイナス面もある。

okanekazoeru

 東洋経済新報社が報じたところによると、大手電機メーカーの東芝は、取引先に対して債務支払いサイトの延長をたびたび行っていたという。大手電機メーカーは業界慣行で120日から150日程度の支払いサイトとしているところが多いが、同社は120日を180日に引き延ばすよう取引先各社に要請したという。

 実際、同社が支払いサイト延長の要請を開始したとされる2009年以降、支払いまでの平均日数は長くなっている。2009年時点では平均68日だったが、2014年では90日に伸びた。
 業界慣行では120日なのに、実際の数値が68日なのは、取引先によって支払い条件が異なることが原因と考えられる。立場が強い取引先は、早いタイミングでの支払いを望むことになるため、こちらの支払いは早期に実施されている可能性が高い。特に海外のメーカーは、下請けだからといって従属的にはならず、数量が少ない場合には、早いタイミングでの支払いや、場合によっては前払いすら要求するところも多い。

 パナソニックも2013年から、下請けの中小企業に対して支払いサイトを90日から120日に延長するよう通告している。パナソニックは、創業者である松下幸之助氏の強い意向で、月末締め15日後払いという、下請けにとって有利な支払い条件を堅持してきた。だが2002年の経営悪化を受け、90日まで支払いを延期、さらに2013年には120日まで延期することになった。同社が支払い延長を通告する前は、支払いまでの全体的な平均日数は38日だったが、現在では62日と2倍近くになっている。

 企業は売上代金をできるだけ早く回収し、支払いはできるだけ遅くした方が、手元の資金を確保しやすくなる。キャッシュ・フローを重視するという観点で考えれば、取引先への支払いは遅い方がよい。
 だが、企業が下請けに対して支払いを送らせるということは、下請けの資金繰りを悪化させることでもある。バリューチェーン全体で見た時に、この措置が妥当なのかどうかはまた別問題である。

 また経済全体を考えた場合にも支払いサイトが遅いことはあまりいい効果をもたらさない。必要な代金は素早く支払ってしまい、効率的に資金を回した方が経済成長しやすいからだ。日本は金融システムが整備されているので、本来であれば、下請けに対して支払いを遅らせなければ資金繰りができないという状況ではない。

 日本企業は戦時中の統制経済の影響をまだ引きずっており、大企業を中心とした「系列」という特殊な産業形態が残っている。こうしたウェットな家族主義的関係は、経営が苦しい時ほど、その本領を発揮すべきだが、現実は逆のようである。経営環境が苦しくなると、結果的に下請け企業に資金繰りを押し付ける形となっている。

 下請け、元請けともにもっとドライな関係であれば、支払いサイトは過剰に長くならず、下請けの負担も少なくなる。結果的に経済全体のマネーの循環も高まるはずだ。本当に日本型経営の環境を維持することが全体の利益につながることなのか、もう一度考え直してみる必要があるだろう。

 - 経済 , ,

  関連記事

doparubyu
フランスの著名俳優が富裕層増税に反発してロシアに移住。著名人の国外脱出が相次ぐ

 ロシア政府は3日、フランスの著名俳優ジェラール・ドパルデュー氏にロシア国籍を付 …

factory07
米国がモノを買わなくなっている。日本人は米国の過剰消費を批判している場合ではない

 米国が世界の買い手としての立場を降りようとしている。新興国経済の鈍化が目立つ中 …

abeamari
産業競争力会議がテーマ別会合をスタート。雇用流動化や企業再編は実現できるのか?

 政府の産業競争力会議3月6日、テーマ別会合の議論をスタートした。この日は「人材 …

sebunsuzu
物言う株主がセブンの世襲人事観測に警鐘。会社側は否定しているが・・・

 物言う株主として知られる米ヘッジファンド運営会社サード・ポイントが、セブン&ア …

kuroda02
日銀サプライズ追加緩和。長期金利を意識したものだった可能性も

 日銀は10月31日の金融政策決定会合において、追加の量的緩和策を決定した。追加 …

kaishaho
日本の上場企業はすでに国有企業?懸念されるガバナンス問題

 公的年金による積極的な株式投資の結果、多くの企業で政府が事実上の大株主になって …

ichimanen
政府が中長期的な財政収支見通しを発表。最後は歳出の大幅抑制しかない?

 政府は2015年2月12日、「中長期の経済財政に関する試算」を公表した。前回の …

intelbaytrail
インテルはもはやGEのような会社。第2四半期決算ではっきりした今後の方向性

 半導体世界最大手の米インテルは2014年7月15日、2014年4~6月期の決算 …

amari
注目の4~6月期GDPは実質で2.6%。改定値もこの水準であれば消費税増税?

 内閣府は8月12日、2013年4~6月期の国内総生産(GDP)一次速報値を発表 …

shukatsu
就活は4年生からと政府が要請。だが建前を並べたところで、現実問題は解決しない

 政府は、大学生の就職活動の解禁時期を現在の3年生の12月から、4年生の4月に変 …