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学校における「いじめ」の各国比較研究。教育プログラムの多様化はひとつの解決策

 

 全国都道府県教育長協議会は2015年1月、諸外国におけるいじめ問題の比較研究の結果を発表した。日本ではいじめに遭う確率は低いものの、再発したり長期化する割合が高く、見て見ぬふりをする人が多いことが明らかになった。一方、狭い人間関係を継続させない工夫があれば、いじめを軽減できる可能性も示唆している。

 gakkou 研究では、日本、ノルウェー、英国、オランダの各国におけるいじめの状況を比較している。日本におけるいじめの被害経験者率は13.9%と英国(39.4%)やノルウェー(20.8%)などと比較するとかなり低い。いじめに遭う確率そのものは、諸外国に比べて低いということになる。

 一方、いじめが再発したり、いじめ被害が長期化する傾向は、日本が17.7%ともっとも高くなっている。ノルウェーは17.1%と比較的高いが、英国は12.4%、オランダは11.7%と低い数値にとどまっている。日本の場合、いじめに遭う確率は低いものの、一旦いじめに遭ってしまうと、それが長期化する傾向が見て取れる。

 日本とノルウェーでいじめの長期化傾向が顕著なのは、学校の制度による影響が大きいと考えられる。ノルウェーと日本は、全員に同一の教育システムを提供する、いわゆる単線型教育を採用しており、人間関係が長期にわたって継続しやすい。この結果を見ると、定期的に人との関係がシャッフルできる環境があれば、いじめ被害を低減できる可能性が見えてくる。

 当然のことながら、いじめは学校制度だけの問題ではない。日本の場合には、社会的な要因も大きいと考えられる。日本はいじめの仲裁にはいる割合が低く、逆に傍観する割合が高いという結果が出ているからだ。
 どの国も年長になるにつれていじめを仲裁する人の割合は低下してくるが、日本はその傾向が顕著である。英国では中学校3年になっても仲裁に入る人は45.9%存在しているが、日本ではわずか21.8%である。

 逆にいじめを傍観する人の割合は日本の方が高くなる傾向がある。小学校5年生で傍観する人はわずか26.4%で、オランダよりも低いが、中学校3年制になると傍観者は一気に61.7%まで上昇する。オランダの中3のデータはないが、英国では傍観者は41.8%にとどまっている。

 日本社会は他人に対する関心が薄く、他人の問題には関わらないという人が多い。というよりも、こうした不正に対して関与すると社会的制裁を受ける可能性があるため、躊躇しているという方が正しいかもしれない。日本社会では、不当な行為を行った本人よりも、それを指摘した人の方が非難されることが多いというのは、職場などでも実感しているはずだ。

 報告書では、欧州においては、加害者に対する懲罰よりも、「市民性教育(シティズンシップ教育)」に重点を置いていじめ対策を行っているとしている。欧州と日本では事情が異なるので、単純な比較はできないが、市民性の教育はいじめ根絶に重要であることは間違いない。

 ただ短期的には、閉鎖的な人間関係が継続しない教育システムの構築は効果を上げそうである。価値観が多様化している現代において、同一の教育を全員に長期間提供するメリットは少なくなっている。
 様々な教育プログラムの選択肢を提供することができれば、多様性のある人材を育成しつつ、いじめ問題も軽減できるはずである。検討してみる価値は高いだろう。

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