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習近平氏はシンガポール型経済システムに着目。だが実現は絶望的?

 

 新しく中国共産党総書記に就任した習近平氏が、問題山積の中国の現状に対してどのような解決策を提示するのか内外の注目が高まっている。習氏は今のところ「従来の改革開放路線を強力に推し進める」としかメッセージを発していないが、有効な切り札は持っているのだろうか?

 中国が抱える最大の問題は、高度経済成長と社会不平等の解消、さらには共産党の権力維持をすべて同時に進めなければならないという点である。
 高度成長と社会の不平等は社会と経済の民主化を進めればかなり改善される可能性が高い。だがそれでは共産党一党独裁の権力を失ってしまう。一部の権力者を中心にした上からの改革開放路線では富の不平等はなかなか解消されないのが実情だ。

 もっとも習氏の頭の中には、民主化というキーワードはハナから存在していない可能性が高い。なぜなら、新しく発足した中国の最高指導部(政治局常務委員)7名のうち、3名が江沢民元総書記のグループに属しているからである(自身も含めると4名)。江沢民元総書記は、上海を基盤に数多くの国営企業に影響力を持っており、国家独占資本における最大の既得権益者である。大胆な民主化を実施すれば彼らの権力基盤が消滅してしまうので、基本的にこの選択肢はあり得ない。

 習近平氏は、解決が困難な方程式を解くカギとしてシンガポールに注目しているといわれる。2010年、習氏は江沢民氏の指示で、中国を訪問中のシンガポール初代首相のリー・クワンユー氏と会談した。さらに同年、軍幹部とともにシンガポールを訪問し、2011年にはシンガポールに調査団を派遣している。

 シンガポールは形式的には民主国家となっているが、実際には建国の父と呼ばれるリー・クワンユー一族が支配する独裁国家。積極的な産業政策と外国からの資本導入によって経済的には大成功し、1人当たりのGDPでは日本よりも豊かになっている。
 このため国民からの不満は最小限に抑えられており、大規模な民主化運動は起こっていない。もっとも政府に対する批判は一切タブーであり、一部では冗談半分に「明るい北朝鮮」とも呼ばれている。

 習氏は民主化を行わず経済的に成功しているシンガポールをモデルに経済政策、社会政策を立案するつもりのようである。だがその実現は極めて困難と考えられる。
 シンガポールは小さな都市国家であり水道すら隣国マレーシアに依存している。小国ゆえに教育水準も高く、金融立国が可能となったわけだが、超大国である中国はそうはいかない。10億人を超える人口を養うには金融サービスだけでは到底無理であり、もっと大規模な内需拡大策が必要となる。

 しかも中国には香港というやっかいな都市も抱えている。政府批判が許されず、経済活動一辺倒のシンガポールには文化らしい文化はひとつもない。だが香港は英国統治が長かったために市民が成熟しており、民主主義に対する意識も高い。お金さえ与えていればとりあえず満足するシンガポールの民衆とは大きく異なっている。

 日本では半分願望なのかもしれないが、中国経済はやがて大崩壊するという「中国崩壊論」が一部で大きな支持を得ている。簡単に大崩壊するほど中国経済が脆弱かどうかは分からないが、小国シンガポールを手本にせざるを得ないと現状を考えると、崩壊論にはそれなりの説得力があるのかもしれない。

 - 政治, 社会, 経済

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