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日本で物価が上がらないのは、産業構造による影響が大きい?

 

 日銀が量的緩和策をスタートさせてから2年になろうとしている。当初は労働力不足などが重なり、インフレが加速するとの懸念もあったが、今のところその気配はない。物価が予定通り上昇しない理由は単純ではないが、産業構造による影響は無視できないだろう。

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 帝国データバンクの調査によると、従業員(正社員)が不足している企業は38%に達しており、もっともその割合が高かったのは情報サービス業だという。次いで建設、小売りという順になっている。
 日銀が発表した12月の企業サービス価格指数は前年同月比3.4%の増加となっているが、情報処理サービスの価格は前年同月比1.9%と平均よりも大幅に低くなっている。これは消費税を加味した数字なので、1.9%ということになると実質的に値下げに近い。

 もっとも人手が足りないという業種で値下げが行われているというのは少々、不可解である。しかも、情報処理サービス業は完全に労働集約型であり、本来、人件費との相関が高い業種なはずである。このナゾを解く鍵は、IT業界の産業構造にありそうだ。

 IT業界はハイテク分野でありながら、重層的な下請け構造を維持している古い業界慣行で知られている。大手企業が受注したシステム案件は、大手が一定の利益を抜いた上で、そのまま下請け企業に「丸投げ」される。大手の仕事は極論すると営業して案件を取ってくるだけである。
 このような慣行が残っていると、大手は価格が安くても仕事を確保した方が有利であり、全体の利益を考えなくなる。結果としてシワ寄せが下請けに集中し、給料が上がらず人手不足が深刻化する。一方で大手企業の方は人材が余っており、その雇用を維持するために、下請けに無理を強いることになる。
 全体的にIT技術者そのものの育成が不十分という要因もあるだろうが、やはり職場として魅力ないことの影響は大きいだろう。

 だがこうした構造はIT業界のみならず、多かれ少なかれ、日本の産業全体に見られるものである。系列による縛りや重層的な下請け構造は、戦時中の国家統制で強制的に作られたシステムであり、日本の伝統的な商慣行ではない。

 ドイツや米国では、中小企業の利益率は大手企業と遜色ないところが多いのだが、これは企業活動が自由であり、価格転嫁が容易であることが背景にあると考えられる。このため、欧米各国では常にインフレの加速が懸念されることになる。日本の状況はこれとは正反対ということになる。
 日銀が量的緩和策を実施する前までは、こうした産業構造の改革と量的緩和はセットにして実施すべきという声があったが、今ではほとんど聞こえてこない。原油価格の下落で、さらに物価上昇が鈍化している今こそ、もう一度、根本的な議論が必要だろう。

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