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鳩山氏の暴走で浮き彫りになる、日本人にとっての「法の支配」

 

 クリミアを訪問中の鳩山由紀夫元首相は2015年3月12日、旅券を返納させるべきだという意見が出ていることに関して、没収されればクリミアに移住する可能性があると語った。

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 鳩山氏は、祖父の鳩山一郎元首相が、日ソ共同宣言の立役者ということもあり、親ロシアの政治家として知られている。鳩山氏は、ロシアによるクリミア半島の併合を容認する発言を行っており、ロシアの武力によるクリミア併合を容認しない日本政府の立場と真っ向から対立している。

 日本政府は、鳩山氏がクリミアを訪問する意向を明らかにしたことから、渡航を中止するよう説得していた。だが、鳩山氏はこれを無視して日本を出国、10日にクリミア入りしていた。菅官房長官は12日の記者会見で「コメントする気にもならない」と強い不快感を示している。国内では旅券を返納させるべきという意見も出ているが、移住に関する鳩山氏の発言はこれを受けて出てきたものである。

 政府はイスラム国に関する取材でシリアに渡航しようとしていたカメラマン・杉本祐一氏の旅券返納を命じている。民主国家において渡航の自由は基本的人権のひとつであり、よほどの事態でなければ制限をかけてはいけないものである。もし杉本氏に対する返納命令が妥当性のあるものならば、当然、鳩山氏に対しても旅券返納を検討する必要が出てくることになる。

 だが、政府はこの件について完全に腰が引けている。記者会見で菅氏は「我が国の総理大臣をやった方ですから、影響は極めて大きいと思う」と述べ、当面は強硬措置を実施する考えがないことを明らかにしている。鳩山氏に対して何のアクションもないのであれば、旅券返納命令という法の執行そのものに間違いがあるのか、法の下の平等が担保されていないのかのどちらかとなる。

 鳩山氏の移住発言は、このあたりの事情を知った上で、故意に行っているものと考えられる。日本は民主国家の中では、法の支配という概念が最も浸透していない国のひとつである。法の背景には理念が存在しているが、それに対する認識が乏しく、法の執行に明確な基準を定めることができない。このため、杓子定規な解釈が横行するか、その場の雰囲気で法の執行が決定されてしまうことが多い。
 「旅券を没収できるものならしてみろ」という鳩山氏の挑発的な発言は、法に対する日本のあいまいな姿勢を逆手に取った作戦というわけである。

 今回の一連の鳩山氏の行動が日本の国益を大きく損ねていることは誰の目にも明らかである。だがこうした鳩山氏に対して日本の法は無力である一方、それほど大きな影響があるとは思えないカメラマンのシリア渡航に対してはいとも簡単に法が執行されている。

 鳩山氏の行動は、もはや常識では理解できないが、そうであるからこそ、法の支配や法の下の平等という、日本社会がこれまで正面から向き合ってこなかった問題が浮き彫りになったともいえる。
 法の支配が曖昧な国は、諸外国からその部分を付かれ、交渉材料にされるリスクを常に抱えている。このことについて日本人はもっと意識した方がよさそうだ。

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