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中国主導のアジアインフラ投資銀行に英が参加。米は表向き反発なのだが・・・

 

 英財務省は2015年3月12日、中国が主導するアジアインフラ投資銀行に参加する方針を明らかにした。主要7カ国で参加するのは英国が初めて。米国政府は不快感を表明しているが、水面下ではどのような交渉が行われるのかを予測するのは難しい。日本はいっそう難しい立場に置かれることになる。

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 アジアインフラ投資銀行は中国が提唱し、年内の運営開始を予定しているアジア地域向けの開発支援金融機関である。これまでに東南アジア諸国連合(ASEAN)各国やインド、ニュージーランドなど、27カ国が参加を表明している。主要先進国のひとつであり、世界の金融市場で米国に次ぐ影響力を持つ英国が参加することで、同金融機関の存在感は一気に高まることになる。

 アジアのインフラ投資については、米国主導で作られ、その運営が実質的に日本に託されているアジア開発銀行という金融機関がある。アジアインフラ投資銀行は、アジア開発銀行の業務と完全に重複することから、アジア太平洋地域の金融システムにおける主導権を米国から奪い取ろうという意図があると考えられる。

 米国は英国の参加決定について不快感を表明しており、日本も基本的に同じスタンスに立っている。アジアの金融システムにおける主導権を中国に奪われてしまうと、日本のアジア太平洋地域におけるプレゼンスは大幅に低下することになるため、日本にとっては由々しき事態といえる。

 だが、注意しなければならないのは、米国と中国は基本的には敵対関係にはなっていないという点である。米国と中国は、アジア太平洋地域の覇権について、双方がどこまでを許容するのかについて交渉を行っている最中であり、中国は米国との交渉を有利に進めるために、あえてこうした構想を提唱しているフシがある。
 また英国も、米中交渉の間に割り込むことで、国際社会での発言力を確保しようとしている。英国のこうした行動は、伝統的なものであり、想定内といってよいだろう。

 米国は表面的には中国に対して反発を強めるものの、水面下では、アジアの金融システムをめぐって交渉を進めていく可能性が高い。従来の日本であれば、米国とのパートナーシップは崩さず、米中交渉がまとまった段階において、日本の権益を確保してもらえるよう米国に働きかけるというのが外交上のセオリーだったかもしれない。

 だが日米関係は、以前とは様変わりしており、このような交渉を米国と行う環境にはなっていない可能性がある。俯瞰的に見ると、日本と中国と基本的に対立関係にあり、日本は米国に対しても一定の距離を置いているように見える。
 もしこうした外交姿勢を続けるのであれば、日本は、米中交渉が水面下で進んでしまうことを想定しておく必要があり、そうなった場合の対応策についても準備が必要となるはずだ。だが、今のところ、日本国内にそうした様子はほとんど見られない。

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