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安倍政権が考える言論の自由と民主党が考える言論の自由

 

 与野党の間で「言論の自由」の考え方をめぐって論争となっている。安倍首相がテレビ番組の内容を批判したことについて、民主党の岡田克也代表や細野豪志政調会長が問題視したのが事の発端だが、これまでのところ両者の議論はまったくかみ合っていない。

 abetouben 安倍氏が昨年11月18日に出演したテレビ番組でアベノミクスの成果について否定的な見解を示したVTRについて「おかしいじゃないですか」と発言した。この発言が3日の衆議院予算委員会で指摘されると、安倍氏は「私の考えを述べるのは言論の自由だ」と反論したことで、さらに騒ぎが大きくなった。

 細野氏は3月12日の予算委員会で「正直言って、ちょっと衝撃を受けた。言論の自由だという発言への思いは変わらないか」と再度この問題を正すと、安倍氏は全く問題ないとの認識を示し、細野氏に真っ向から反論した。 
 翌13日の記者会見でも、民主党の岡田克也代表が「安倍氏の憲法観は根本的に間違っている。もちろん総理大臣だからといって何も言えないということではないが、そこは相当考えてご発言にならないと」と述べ、安倍氏の発言は、民主主義の根幹に関わる重大問題であるとの認識を示した。
 この発言に対し、管官房長官は「総理大臣の地位にある者についても、当然憲法上の表現の自由は保障されている」として再度否定している。

 このように民主党と安倍政権側の議論はまったくかみ合っていない。民主党側は安倍氏らの発言を民主主義の根幹に関わる問題と認識しているようだが、安倍政権側にそのような意識はない。つまり、両者の「言論の自由」に対する考え方が根本的に異なっているのである。

 民主党は、憲法は基本的に権力者を縛るものという認識を持っているようである。国家権力にはそもそも暴力性があるため、独裁的な権力行使は容認されず、国民には言論の自由を保障する必要があるという立場だ。つまり言論の自由が保障されるのは国民の側であり、権力側は一定程度の抑制が必要という認識になる。一方、安倍政権側は、自分も国民のひとりなので言論の自由が当然に保障されるとう考え方に立脚している。

 民主党側の主張は、現代民主主義の世界では非常にオーソドックスな考え方だが、この価値観が共有されている国は意外と少なく、米英独仏など西側先進国が中心である。形式的には民主国家となっていても、トルコやロシア、シンガポールなど、こうした考え方が通用しない国はたくさんある。

 日本は明治維新で近代化を達成したが、明治政府は革命政権と王政復古政権の混在であり、厳密な意味で国民が主権を勝ち取ってきたわけではない(大正デモクラシーなどの別な評価もあるが)。日本国憲法も米国からの要請で作られたものであり、日本がどこまで民主国家なのかという点については、戦後もずっと論争になってきた。

 安倍政権側が、憲法観の違いについて否定していないところをみると、オーソドックスな民主主義の考え方ではないことについて安倍政権側は特に問題視していないとも考えられる。日本はどちらかというトルコやシンガポールに近い立場の国なのかもしれない。

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