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上からの改革でROE向上を掲げる企業が急増。そのシワ寄せはどこに?

 

 ROE(株主資本利益率)の向上を経営目標に掲げる企業が急増している。これまで日本の株式市場は株主利益がほとんど重視されてこなったことを考えると、株主に対する利益還元策は素直に評価してよいだろう。だがマクロ的に見ると、日本企業のこうした措置には矛盾が生じる可能性もある。

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 日立製作所は中期経営計画においてROEを10%超にすることを経営目標に定めた。このほか三菱重工や大和証券グループなどが相次いで同様の見解を表明している。
 これまで日本企業は株式の持ち合いに代表されるように、基本的に株主利益を考えずに経営を行ってきた。ここにきて各社が急に方針を転換しているのは、東証が6月にコーポレートガバナンス・コードの受け入れを前提とした新しい上場ルールを適用するからである。ROE向上策をはじめとする株主利益の最大化を実施しなければ、機関投資家から投資を受けられなく可能性がある。

 諸外国に比べて低かったROEが上昇することは株式市場にもプラスの影響を与えることは間違いない。株式市場は素直にこうした措置に反応するだろう。だが、もっと大きな視点で見ると、少々矛盾もはらんでいる。

 今回のガバナンス強化策は、アベノミクスの一貫であり、いわば上からの改革である。本来は、企業自らが事業モデルの変革を行い、その結果として、利益が拡大しROEも向上するというのが自然な流れである。だが、日本企業のビジネスモデルはここ20年ほとんど変化しておらず、構造的に高収益体質になっているわけではない。

 このような状況でROEの向上を目指した場合、コストダウンで利益を上げるか、無理な配当を行うしか実現する手段がなくなってしまう。手っ取り早いコストダウンの方法は、賃金の抑制だが、これは賃上げを要請する安倍政権の方針と完全に矛盾する。

 賃上げとROE向上が既定路線となった今、主な矛先は下請け企業に向かう可能性が高い。業績が拡大する大企業と、値引き圧力にさらされる中小企業という経済の二極分化は当分続きそうだ。

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