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美濃加茂市長の無罪判決に検察側が控訴。弁護側は憲法違反と批判

 

 名古屋地方検察庁は2015年3月18日、岐阜県美濃加茂市の藤井浩人市長を無罪とした名古屋地裁判決を不服として控訴した。藤井市長や弁護団は検察の控訴について激しく批判している。

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 藤井市は、市議会議員だった2013年、浄水設備の導入をめぐって便宜を図った見返りに、名古屋市内の業者から現金合わせて30万円を受け取ったとして、受託収賄などの罪に問われた。藤井氏は一貫して現金の受け渡しを否定しており、名古屋地方裁判所は「現金を渡したとする業者の供述には疑問がある」として、無罪判決を言い渡した。

 しかし検察側は、現金を渡したとする業者の供述の信用性を否定した裁判所の判断には誤りがあるとして、控訴に踏み切った。藤井市長や弁護団は、検察の対応について激しく批判しているが、主任弁護人を務める元検察官の郷原信郎氏は、今回の控訴は憲法違反の疑いがあると主張している。

 憲法では、第39条において「同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問われない」と規定している。これは英米法における「二重の危険の原理」を体現したものと解釈されている。
 逮捕・起訴されるということになると、その本人には大変な重圧が課せられる。処罰される不安にさいなまれ、社会的、経済的に追いつめられた状態で裁判を続ける必要がある。起訴する側には国家という強大な組織力があることを考えると、被告人の方が圧倒的に不利な状況に置かれる可能性が高い。このため、検察側に対しては完全な証拠を揃えて裁判に臨むことを求めるとともに、起訴する機会は1回のみに制限するという考え方である。

 諸外国では、無罪が確定した事件について、検察が起訴できない制度となっているところがほとんどである。日本は、最高裁までの一連の訴訟手続きをひとつの裁判とみなし、その中において、検察が上訴することを認めているが、この制度については郷原氏が指摘するように憲法違反との学説は根強く残っている。

 検察の上訴権に関する学説上の議論はともかく、本来、憲法が示している理念や、藤井氏が選挙で選ばれた公人であることなどを考えると、控訴の判断は極めて慎重に行うべきというのが自然な考え方だろう。無罪が確定した公人に対して何度も訴訟ができてしまうと、民意で選ばれた公人による職務遂行を実質的に妨害することができてしまうからである。

 今回の無罪判決と検察による控訴は、判決が正しいのか、不服なのかといった問題ではなく、民主主義そのものを問いかける出来事と考えた方がよいだろう。

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