内閣府の世論調査。個人か国かとの問いで、個人とする割合が過去最高に
内閣府は2015年3月23日、社会意識に関する世論調査の結果を発表した。「国や社会のことにもっと目を向けるべき」という回答が減少し、逆に「個人生活の充実をもっと重視すべきだ」という意見は大幅に増加している。
社会意識に関する世論調査は、国を愛する気持ちや社会との関わり、民意の反映度合いなどについて調べたもので、毎年実施されている。
この中で「国や社会のことにもっと目を向けるべき」と回答したのは47.8%で昨年の49.5%から1.7ポイント減少した。この数値は2009年には56.6%もあったので、ここ数年で大きく減少していることが分かる。逆に「個人生活の充実をもっと重視すべきだ」という意見の割合は急上昇しており41%になった。2009年の33.5%と比較すると7.5ポイントの増加で、バブル経済当時の37%を大幅に上回っている。
国や社会のことを考える人の割合が減り、個人を重視する人が増加したわけだが、もう少し長期で見ると様子が異なる。確かに個人を重視すべきという回答は過去最高だが、一貫して30%台を維持しており、大きな変化はないと見ることもできる。
一方、国や社会が大事という価値観はバブル崩壊後に急上昇しており、そこから高い状態が続いていた。つまり経済的に苦しくなってきたので、国や社会に対する関心が高まったと解釈することができる。国や社会への関心は2009年の56.6%をピークに減少しており、安倍政権になってからその傾向がさらに顕著になっている。
これは、アベノミクスの効果が出て、経済の見通しが明るくなったことで、社会に対する関心度合いが下がったのかもしれない。逆に、国や社会に対する希望が失われたとも解釈することも可能だ。
ちなみに、同じ調査で民意の反映度合いについて尋ねた項目では、安倍政権の発足以後、民意が反映されていると回答した人の割合が急増している。この調査項目はかねてから日経平均との相関が高いといわれているが、もしそうだとすると、このところの株高が国民の満足度を向上させていることになる。やはり個人主義になってきているのは、景気の見通しが明るくなってきたことが主な要因である可能性が高い。
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