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ジョブズ氏に関する新しい伝記が話題に。どっちのジョブズ氏がホンモノか?

 

 米国で発売されたアップル創業者スティーブ・ジョブズ氏の伝記が話題となっている。その理由は伝記が出版されたからではない。ジョブズ氏に関する伝記はすでに出版されており、世界的なベストセラーになっているのだが、新しい伝記では、ジョブズ氏の人物像が正反対に描かれているからである。

jobuzu

 新しい伝記を執筆したのは、2人のジャーナリスト。生前のジョブズに対する取材と、現在、同社のCEOを務めるティム・クック氏らへのインタビューなどをもとに執筆を行っている。これに対して、以前の伝記は、ジョブズ氏本人が作家に執筆を依頼したものであり、一般にはこちらが正式な伝記として認識されている。
 だが、クック氏らは、新しい伝記を絶賛し、以前の伝記は「ジョブズ氏の真実を描いていない」と辛辣に批判している。この背景には、クック氏らが、ジョブズ氏を神格化し、今後のビジネスに活用しようという意図があるといわれている。

 クック氏らが懸念しているのは、ジョブズ氏のエキセントリックな性格である。ジョブズ氏はもともと反体制的なヒッピーであり、若い頃は風呂に入らないことで有名だった。頑強なベジタリアンでドラッグの経験もある。弱冠16歳で、電話をタダでかけられる違法マシンを開発し数千ドルを稼いだ天才少年は、アップル創業前後も、違法スレスレの行為を平気で行ってきた。

 同社が大きくなってからも行動はあまり変わっていない。自分が気に入らない部下には容赦なく罵声を浴びせ、執拗に退職を迫るのは日常茶飯事であった。エレベータに乗り合わせた社員をその場でクビにした、いつもと違うミネラルウォータを持ってきた秘書に激怒してクビにした、など真偽不明のものも含めて様々な逸話がある。現在の基準で考えれば、100%ブラック経営者ということなるだろう。

 ジョブズ氏の性格は、IT業界ではよく知られており、こうした負の面も含めてジョブズ氏を評価する人が多かった。以前の伝記も、ここまではひどくないものの、ジョブズ氏のエキセントリックな面がストレートに描かれている。自身の行動とは裏腹に、世間から寛容な人と思われたいという願望が強かったといわれるジョブズ氏は、あえてこうした負の面が記述されることを許容した可能性が高い。

 だが、今やアップルは世界最大の企業となり、ジョブズ氏は、理想の経営者として語られるようになってきた。このような状況において、以前の伝記に描かれたジョブズ氏の人柄は、今の経営陣にとって望ましくない存在なのかもしれない。新しい伝記は、ジョブズ氏を心温かい人物として描いている。

 批判され続けた挑戦者が、成功すると立派な人物と評価されることはよくあることだが、それにしても、IT業界でも札付きの暴れん坊だったジョブズ氏が人格者に脱皮するというのは少々驚きである。

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