世界観光ランキングで日本の順位が急上昇。要因は評価項目の入れ替え
世界経済フォーラムは2015年5月6日、2015年の旅行・観光競争力ランキングを発表した。今回のランキングから評価基準が大幅に変更されたこともあり、単純に比較はできないものの、日本は前回の14位から9位と大きく順位を上げた。社会インフラなど基礎的な評価項目が増えたことが日本にとってはプラスに作用した。
このランキングは、世界141カ国・地域を対象に、各種インフラ、観光資源の豊富さなどを総合的に評価したもの。今回のランキングから評価項目が総入れ替えとなり、これに伴って順位も大幅に変動している。
前回のランキングは、1位スイス、2位ドイツ、3位オーストリア、4位スペイン、5位英国、6位米国、7位フランスという結果であった。
今回のランキングでは、1位スペイン、2位フランス、3位ドイツ、4位米国、5位英国、6位スイス、7位オーストラリアとなった。全体的にはスイスのランクが低下し、スペインとフランスのランクが上昇した。
日本は前回は14位だったが、今回は9位と健闘している。今回のランキングでは、国民の健康や労働者の教育水準、大規模なスタジアムの数など、基礎的な部分の評価項目が増えたことに加え、無形文化の数など、日本にとって有利な項目が設定されたことが、ランキングの上昇につながった。
一方で、以前から指摘されていることだが、ソフト面での課題は大きい。円安になっているにもかかわらず、価格面での競争力は米国よりも低くなっているほか、レンタカーやATMのクレジットカード受け付けなど、サービス面におけるインフラの順位がかなり低い。また、ビジネス出張した人が延長で観光滞在を推奨する割合は129位となっており、いわゆる口コミ的な評判はあまりよくない。
巨大都市を擁し、長い歴史と文化のある国は、ほとんど例外なく観光大国となっている。日本はようやく年間1000万人の観光客を受けれるようになったが、英国は3000万人、米国や中国は6000万人、フランスにいたっては8000万人もの観光客が訪れている。
日本も本来であれば、数千万人が来日していておかしくない。日本は十分すぎるほどのハードを持っているが、いまだにクレジットカードが通用しない土産物店があるなど、ソフト面での課題は多い。また、文化財の保護を強化するなど、長期的な視点に立った政策も進めていく必要があるだろう。
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