ソフトバンクの孫社長が後継者を指名。通信事業から再びネット事業に回帰?
ソフトバンクは2015年5月11日、2015年3月期の決算を発表した。出資する中国の電子商取引大手アリババの上場益で純利益が過去最高となった。ただ、国内の通信事業で基本的な利益を稼ぐ構図は変わっていない。
孫社長は米グーグルからスカウトしたニケシュ・アローラ氏を自身の後継者に指名したが、グローバルな収益構造に脱皮させることが主な狙いと考えられる。
売上高は前期比30%増の8兆6702億円、当期利益は同28.5%増の6684億円と、大幅な増収増益となった。国内の通信事業が好調で、利益の7割近くを稼ぎ出している。これに加えて、出資している中国の電子商取引大手アリババが米国市場に上場したことで、持ち分法による投資利益が上乗せされた。
一方、約2兆を投じて買収した米国の通信会社スプリントの業績は冴えない。リストラ策が功を奏し、損失額は着実に減少しているが、業績が急拡大するという状況には至っていない。
当初、孫社長はスプリントを軸に、米国第4位の通信会社であるTモバイルUSを買収し、AT&Tやベライゾンと肩を並べる米国の主要通信会社に変貌させる戦略を打ち出していた。だが、司法当局の判断でTモバイルUSの買収が事実上不可能となったことや、スプリントのリストラの遅れなどによって、そのシナリオが崩れつつある。
一方で、アリババの投資が大成功し、4兆円の含み益が転がり込んでくるなど、ネット系のビジネスに大きな可能性が見えてくるようになってきた。一度は完全な通信会社になったソフトバンクだが、ここに来て、再びネット系のビジネスに軸足を移す可能性が出てきたといえるだろう。
孫氏は決算発表において、米グーグルから引き抜いた、ニケシュ・アローラ氏を後継者として指名した。ドイツテレコムなど通信会社に在籍し、その後グーグルに移籍している。
通信事業とネットビジネスの両方に精通しており、孫氏の後継としては理想的な人物といえる。アローラ氏の後継指名も、ネットビジネスに軸足を移すための布石ではないかと見られている。
孫氏は「まだ引退するつもりはない」と語っており、どこまでアローラ氏に権限を渡すのかは不明だが、状況によっては一気にアローラ体制にシフトする可能性もある。
とりあえずアローラ氏を指名できたことで、孫氏の後継者がいないというソフトバンク最大の懸念材料はとりあえず払拭されたといえるだろう。
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