ニュースの教科書

ジャーナリストが記事にできないホンネやつぶやきを集めた脱力系ニュースサイト

安保法制をめぐってはやくも不毛な議論。「昭和」の時代は続く

 

 今国会で審議が始まる安全保障関連法案をめぐって、早くも不毛なやり取りが行われている。昭和の時代から状況はほとんど変わっていないようだ。

 中谷防衛相は2015年5月22日、安全保障関連法案が整備された場合について「自衛隊員のリスクが増大するということはない」と明言した。武器の使用拡大など隊員のリスクを軽減する措置を盛り込んだことがその理由である。

nakatani

 安全保障関連法案は、日本の集団的自衛権の行使を認める内容となっており、成立となれば、海外での自衛隊の活動が大幅に拡大することになる。自衛隊員のリスクが増大するとの懸念に対して、政府はその可能性はないと認識していることになる。

 こうしたやり取りは、日本では昭和の時代から延々と続けられてきた。

 日本が集団的自衛権の行使に踏み切り、自衛隊が海外で活動するということになれば、個別的な隊員のリスクが増大するのは当然のことである。自衛官出身の中谷氏がこの事実を認識していないわけがない。

 それに対して防衛相がわざわざこのようなコメントを出すということは、この事実は口に出さない方が得策と判断しているからに他ならない。
 危険だと明言してしまうと、そのような危険なものには賛成できないという論調が一気に高まってしまうことが懸念されるからである。

 こうした反発について感情的であると批判することはたやすいが、問題はむしろ、政府側に腰を据えて安全保障に取り組む覚悟が出来ていないことである。

 そもそも安全保障とは、国家全体のリスクをコントールするために存在するのであり、隊員の個別リスクの話と同じ基準で議論すべきものではないが、こうした論理的な区別は、日本では極めて曖昧である。
 こうした曖昧な議論を排除し、現実の隊員リスクも含めて国民に説明するのが政府の役割だが、今のところ政府はその役割を果たしていない。

 昭和の時代から現代に至るまで、安全保障についてまともな議論ができない状況が続いているわけだが、皮肉なことに、こうした議論ができないという日本の土壌そのものが安全保障上のリスクとなりつつある。

 戦後は、米国中心の国際秩序が形成されていたため、日本は平和憲法を理由に軍事的なコミットを避け、一方で米国の核の傘の庇護を受けるというダブルスタンダードが可能であった。だが、米国の安全保障政策は大きく変化しており、日米同盟は以前のように絶対的な存在ではなくなりつつある。

 日本がどういうスタンスで国際的な安全保障にコミットするのかを明確にできなければ、他国からコントロール不能な国家とみなされる危険性が高まってくる。
 集団的自衛権に関する議論ですらこうした状況であることを考えると、歴史認識問題を含め、日本の見識が一層問われることになる憲法改正など、土台無理なことなのかもしれない。

 - 政治 ,

  関連記事

harumitoriton
甘利氏辞任ではからずも注目されてしまった、政府最後の聖域「UR」という大問題

 甘利経財相は2016年1月28日、記者会見を開き、自らの金銭問題に対する責任を …

koutei
野田元首相が公邸に住まない安倍首相を批判。歴代首相はなぜか私邸住まいが多い

 国家の安全保障を極めて重視している安倍首相がなぜ首相公邸に住まないのか?とWe …

puting20
G20ではロシアへの批判が殺到。プーチン大統領は怒って途中帰国?

 オーストラリア・ブリスベンで開催されたG20(20カ国・地域首脳会合)において …

inrakku02
タイのインラック首相がとうとう失職。7月の総選挙に向けて混迷の度合いが深まる

 タイの政局がますます混迷の度合いを深めてきた。タイの憲法裁判所はインラック首相 …

shukinpei03
ボアオ・アジアフォーラムで習近平氏が国家主席就任後、日本側要人と初めて会談

 中国の習近平国家主席は4月8日、博鰲(ボアオ)アジアフォーラムに出席し、同フォ …

obamaindo
オバマ大統領がインドの共和国式典に主賓として参加したことの意味

 オバマ米大統領は2015年1月25日、インドを訪問しモディ首相と首脳会談を行っ …

yudachi02
中国軍幹部がレーダー照射を認める。軟化のサインか心理戦か?

 中国海軍の艦船が海上自衛隊の護衛艦にレーダーを照射した問題で、中国軍の高級幹部 …

kyouikusaisei02
政府の教育再生実行会議で「6・3・3・4制」の見直しがスタート。だが目的は曖昧なまま

 政府の教育再生実行会議は、小学校から大学までを「6・3・3・4」の年数で区切る …

isejingu
式年遷宮に現職首相が84年ぶりに参列。「私人」として参列しなければならない理由とは?

 20年に1度、伊勢神宮の社殿を造り替える式年遷宮のクライマックスとなる「遷御の …

kerrysensei
親中国派のケリー国務長官が正式に就任。最初の外遊先は中東に決定。

 次期国務長官に内定していたジョン・ケリー氏は2月1日就任宣誓を行い、第68代国 …