ニュースの教科書

ジャーナリストが記事にできないホンネやつぶやきを集めた脱力系ニュースサイト

これ以上の円安はないという黒田発言の真意は?

 

 日銀の黒田総裁は2015年6月10日、現在の円安水準は行き過ぎとの発言を行った。日銀総裁が相場の水準に言及するのは異例のことであり、為替市場は一気に2円近く円高に戻す展開となった。

kuroda02

 黒田氏は、10日の衆議院財務金融委員会において、実質実効為替レートについて言及し「ここからさらに円安に振れるということは、普通に考えればありそうにない」として、現在の円安は行き過ぎとの見解を示した。
 実質実効為替レートとは、通常の為替レートに物価水準と貿易量を加味したもので、通貨の相対的な実力を測るための指標とされている。
 具体的には、主要な貿易相手国の通貨に対する円相場を指数化し、それぞれの貿易量に応じて加重平均したものに、物価変動分を調整して算出する。

 現実のドル円相場は、1985年のプラザ合意をきっかけに長期的な円高ドル安が進み、1995年には1ドル=80円を割る状況となった。その後、一旦は円安に戻すものの、円は再び上昇を開始し、2011年には再度80円を割る状況まで円高が進んでいる。

 しかし、実質実効レートを見ると様子が異なっている。確かに1995年に円高のピークを迎えているものの、その後、実質実効レートは円安が続いており、現在は1980年代と同じレベルの円安水準になっている。ここ20年、現実の為替レートが円高に振れていたにもかかわらず、実質実効レートでは円安が進んでいたことになる。

 最大の理由は日本の低成長とデフレである。実質実行為替レートでは、インフレ率が低い通貨は、安く計算されることになる。つまり、実質実効レートでは過度の円安という黒田氏の発言は、ウラを返せば現在の日本の物価水準は安すぎる、と言い換えることができる。

 そう考えれば、黒田氏の真意は、相場を円高に戻すことではなく、実質実効レートで過度の円安にならないよう、日本の物価はもっと上がるべきだということになる。

 発言によって為替市場は急激に円高に振れたが、発言の真意が日本のインフレ率にあるならば、円安水準の維持は物価上昇につながるという点が意識されてくるだろう。そうなると、仮に円高に戻ったとしてもそれは一過性という解釈になる。

 - 経済 , ,

  関連記事

uknuclear
英国の原発事業に中国が過半数の出資。日本の原発メーカーの戦略にも影響?

 英国と中国は10月17日、英国に建設する次世代原発の運営企業に中国が過半数の出 …

nichigin
黒田新総裁は実はインフレ課税を狙っている?刺激的な英経済紙のコラムが話題に

 日本のインフレ課税の可能性について指摘したエコノミスト誌のコラムが市場関係者の …

doller02
欧州の地下経済比率は平均18.5%。日本は比較的良好といわれるが実態は?

 VISAヨーロッパは5月7日、欧州の地下経済の規模は2兆1000億ユーロ(約2 …

kyuryo
給料は増えたものの、非正規社員の増加で全体への効果は薄い

 民間企業で働く従業員の給与総額は増加に転じたが、低賃金で働く非正規社員が増えて …

monhiru
公的年金を運用するGPIFが、とうとう赤字運用に転落。今後の年金は株価次第?

 公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は2016年8月2 …

tokyowan
4~6月期のGPD改定値は一転して大幅下方修正。速報値はぬか喜びだった

 内閣府は2017年9月8日、2017年4~6月期のGDP(国内総生産)改定値を …

hedgefund
株価暴落の引き金を引いたヘッジファンド。だがその投資手法は素人と同レベルだった

 5月23日の日経平均株価は7%を超える大暴落となったが、その背後にはヘッジファ …

abe20141117
消費増税延期で衆院解散へ。量的緩和策で当面不安はないが・・・

 安倍首相は衆議院の解散と来年10月に予定されている消費増税の延期を決断した。増 …

capitolhill
米財政問題に関する与野党合意が成立。政府機関閉鎖は完全に回避へ

 米国議会の超党派協議会は2013年12月10日、2014年度(2013年10月 …

kanntei
政府、財界、労組による賃上げ協定構想が浮上。だが内容は賃下げを狙ったものだ

 労働者の賃上げが実現できるように、政府、経済界、労働組合の3者で協定を結ぶ構想 …