ニュースの教科書

ジャーナリストが記事にできないホンネやつぶやきを集めた脱力系ニュースサイト

雇用環境は改善しているのに、生活実感は悪化。続く需給のミスマッチ

 

 雇用と生活環境のミスマッチが拡大している。求人倍率が増加し失業率は過去最低水準を更新する一方、生活が苦しいと感じる国民も増加の一途を辿っている。

koyouchingin

  厚生労働省が2015年6月25日に発表した5月の有効求人倍率(季節調整済)は1.19倍となり、前月から0.02ポイント上昇した。有効求人倍率が1.2前後というのは23年ぶりの高水準である。就業者が増え、求職者が減少したことが主な要因。失業率も低水準が続く。

 企業の最前線では、人手不足に悩まされるケースが増えており、雇用に関するマクロ的な統計はビジネス上の皮膚感覚とも整合性が取れている。
 だが、国民の生活実感は雇用の状況とは大きく異なる。これだけ雇用環境が好転すれば、賃金も上昇し、生活実感が楽になるところだが、その兆候が見えないのだ。

 同じく厚労省が7月2日に発表した国民生活基礎調査によると、2013年の1世帯当たりの平均所得は528万9000円となり、前年比で1.5%減少した。生活実感に近い中央値は3.9%減の415万円となっており、中央値の方が減少する割合が大きい。
 また、生活が「苦しい」と感じている世帯の割合は過去最高の62.4%となった。「大変苦しい」と感じる世帯の割合が増えていることが、全体の数値を押し上げている。雇用環境の改善と生活実感はあまり関係していないようだ。

 こうしたミスマッチは、雇用の需給関係が歪んでいることが影響しているかもしれない。例えば建設関係の充足率(求人に対して実際に就業した人の割合)は8%程度、医師・薬剤師は3%とかなり低い。一方、一般事務の充足率は約50%となっており、人を探しやすい業種と人が見つからない業種の差が激しい。

 建設関係は公共事業の増加で人為的に需要を増加させているが、これに供給が追い付かない状況である。医師・薬剤師は地域的な差が大きく影響している可能性がある。

 経済全体の需要はそれほど上向いていない中、少子化によって供給が制限され、公共事業で需要が人為的に操作されたことなどが重なって、一部では極端な人手不足になっている。この状況では全体の賃金上昇にはつながらないので、生活実感も豊かにならない。

 こうした状況はあくまで過渡期に過ぎず、最終的には全体の需要増加に結びついてくるというのが、当初のアベノミクスの目論見であった。だが今のところは、その段階まで進んだとは言い難い状況にある。
 人材の再配置や人の移動の促進など、市場メカニズムによって需給をうまく調整するための枠組みが求められている。

 - 政治, 社会, 経済 , ,

  関連記事

keijiban
中国共産党が国民からの不満や要望を受け付けるサイトを構築。明るい文化大革命?

 中国共産党は、国民の党や政府に対する不満の高まりを背景に、国民からの声を集める …

saishushobun
「核のゴミ」最終処分場選定に関して、日本に欠けている視点とは?

 これまでほとんど手つかずだった、原子力発電所から出る放射性廃棄物の最終処分につ …

factory05
米中両国の製造業指数が示す、好調な個人消費と低調な製造業の綱引き

 米国と中国の製造業で冴えない指標が相次いでいる。米供給管理協会(ISM)が発表 …

torisimariyaku
経済同友会が独立取締役の義務化を要望。実現がほぼ絶望的な理由とは?

 経済同友会は10月28日、企業からの独立性が高い「独立取締役」の設置を上場企業 …

kannsimaera
ドイツで告知なしの監視カメラ導入が禁止に。日本国内の議論はあまりにも低レベル

 ドイツの連立与党は、職場での監視カメラの使用を制限する方針を固めた。従業員に告 …

shukinpei03
ボアオ・アジアフォーラムで習近平氏が国家主席就任後、日本側要人と初めて会談

 中国の習近平国家主席は4月8日、博鰲(ボアオ)アジアフォーラムに出席し、同フォ …

staba
スタバも中国市場だけは別扱い。米国は中国に甘いという現実を見よ

 尖閣諸島問題で中国とギクシャクする日本を尻目に、米国企業が中国に猛烈な攻勢をか …

no image
資産家夫婦殺害事件とJASDAQ粉飾疑惑企業を結びつける点と線

 スイス在住で日本に一時帰国していた資産家夫婦が行方不明になっている事件で、2人 …

shirakawae
前原大臣が白川総裁とガチンコ対決。日銀はいつまで粘れるか?

 本日(5日)開催されている日銀の金融政策決定会合に、前原誠司経済財政相が出席し …

it02
ITが仕事を奪うとの書籍が話題に。だが現実のIT化はもっとイヤラシイかもしれない

 コンピュータによって人々の仕事が奪われ、最終的にはごく一部の知的エリートと、肉 …