レゴが素材の脱石油化を決断できる理由は、ズバリ高収益体質
デンマークの玩具世界大手レゴグループは、主力商品のレゴブロックの素材を従来の石油由来から、持続可能性のある新しい材料に転換する。新素材の研究開発のために約180億円を投じて拠点を整備する。
レゴブロックは世界中にファンを持っているが、そのほとんどは石油由来のABS樹脂から製造されている。同社は石油大手のロイヤル・ダッチ・シェルと長年にわたって提携してきたが、環境保護団体グリーンピースがシェルの環境破壊を問題視、その矛先をレゴにも向け始めた。レゴは最終的にシェルとの提携を解消。プラスチックの使用を段階的にやめる決断を下し、新素材の開発をスタートさせることになった。
直接のきっかけは、グリーンピースによる活動ではあるが、同社は知育玩具として高いブランド力を持っており、環境を意識するスタンスを明確にした方が、得策と判断した可能性が高い。
もっとも超高収益企業であるレゴからすれば、新素材への切り換えはそれほどのインパクトにはならない可能性が高い。
現在、レゴは年間600億個のブロックを製造しており、約7万2000トンのプラスチックを使用している。プラスチックの価格などから原材料費を推定すると、年間140億円程度となる。
同社の売上原価は3400億円もあり、原材料費が占める割合はごくわずかである。同社の粗利益が1700億円、営業利益が1800億円あることを考えると、新素材がよほどの高コストにならない限り、業績に与える影響はわずかだ。
同社は2003年に業績不振に陥り、全社員の3分の1を解雇するという壮絶なリストを実施した。その後、高級玩具にリソースを集中したことで、業績は急回復。10年で売上高を4倍に、営業利益率を1.5倍に拡大させることに成功した。
コストをかけても、素材を吟味し、ブランド力を維持するという戦略は、高収益体質を維持しているからこそ実現できるという、当たり前の理屈をレゴは示している。
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