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安全保障関連法案の成立がほぼ確実に。空虚さばかりが目立った国会審議

 

 今国会最大の焦点であった安全保障関連法案が2015年7月16日、衆議院を通過した。法案が成立することはほぼ確実であり、日本はいよいよ集団的自衛権の行使に踏み出すことになる。だが、国会における議論は、現実の国際情勢を無視した空虚なものばかりが目立ち、今後の日本の舵取りに大きな不安を残す結果となった。

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 本会議では、民主党や維新の党などが退席し、自民・公明両党と次世代の党などの賛成多数で可決された。与党は、来週にも参議院本会議で審議入りすることを目指しているが、野党側は「民意を無視した強行採決だ」として強く反発しており、審議には応じない構えを見せている。
 ただ維新の党が、引き続き、与党側と対案の協議を続ける方針であることを明らかにしており、野党側の足並みは揃っていない。参院で否決、あるいは採決されない場合でも、衆院の3分の2以上の賛成で再可決が可能であることから、関連法案が成立するのはほぼ確実な状況である。

 集団的自衛権の問題は、日本の戦後政治におけるもっとも重要なテーマの一つであった。小泉政権時代には、日米関係が極めて良好だったこともあり、米国からの要請を受ける形で有事関連法案を次々と整備。集団的自衛権の行使に向けて本格的に舵を切ったかにみえた。

 だが、その後、日本の構造改革が頓挫し、リーマンショックを迎えたことで状況が一変。国際情勢の変化もあり、日米同盟の意味が大きく変化してしまった。本来は、新しい世界秩序に対して日本の安全保障はどうあるべきなのかについて、腰を据えて議論する必要があったが、国内の政治情勢はこれにまったく対応できていない。

 安倍首相の周辺には、日米同盟と安全保障に関する現実的な議論を嫌い、情念的な憲法改正や反中国のみを唱える保守派が集まる状況となり、一部の国民はこれに大きな嫌悪感を抱いている。
 一方、反対派は、いまだに「米国の戦争に巻き込まれる」という、55年体制当時の反米スローガンを掲げるのみで、こちらも現実の国際情勢があまり目に入っていない。

 米国をとりまく環境はこのところ大きく変化している。エネルギーの完全自給が可能となり、中国とは一部で対立しつつも、戦略的な対話が進められている。ITを使った軍事技術の驚異的な発達で、軍隊のオペレーションも一気に効率化が進んだ。
 アジア太平洋地域における重要拠点も、東シナ海から南シナ海にシフトしており、従来のように、日本近辺に大量の軍隊を常駐させておくメリットが薄れているのだ。

 「日米が結束して中国と対峙すべき」「米国の世界戦争に日本が巻き込まれる」といった主張はいずれも時代遅れのものとなりつつある。米国の日本に対するコミットメントが低下する中での、集団的自衛権の行使であり、日米同盟の再確認だったはずなのだが、日本側にこうした意識は薄いようだ。
 皮肉なことだが、日本が集団的自衛権の行使に踏み出すことの地政学的な意味をもっとも理解していないのは、日本人自身なのかもしれない。

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