東芝の不正会計問題。自己資本並みに大きい「のれん代」は大丈夫なのか?
不正な会計処理が問題となっている東芝は2015年7月21日、田中久雄前社長、佐々木則夫前副会長、西田厚聰元相談役の歴代3社長が辞任すると発表した。経営陣を大幅に刷新する方針だが、同社の会計問題はこれだけにとどまらない可能性がある。
総額8000億円(当時のレート)近くに達する資金を投じて買収した原子力企業ウェスチングハウス社関連の、のれん代の償却に関して疑問の声が上がっているからだ。
同社に提出された第三者委員会の報告書は「経営トップらを含めた組織的な関与があり、意図的に『見かけ上の利益のかさ上げ』をする目的で行われた」と指摘しており、組織的な不正会計であったと断定している。
不正会計は同社の多くの部門に及び、主力の原子力事業においても、利益計上のタイミングや基準において、利益のかさ上げがあったとしている。
東芝は、原子力部門において巨額ののれん代を抱えている。2006年から2011年にかけて米国の原子力企業ウェスチングハウス社(WH社)を総額8000億円近い金額を投じて取得している。その他の買収などもあり、同社のバランスシートには、1兆円にものぼるのれん代が計上されている。
同社の自己資本は1兆6000億円ほどしかないので、のれん代がなくなってしまうと、同社の自己資本の多くは吹き飛んでしまう状況にある。
各期の利益計上に問題があったのだとすると、将来の利益予想によって変動する「のれん代」が正しく計上されているのかという疑問が出てくるのは当然のことだろう。
東芝によるWH社買収は、当時から、かなり無理のある買収と言われてきた。買収金額が東芝の基礎体力に比して高すぎることに加え、ビジネス的な観点からも疑問視する声があった。
東芝が手がける原子炉はBWR(沸騰水型)だが、WH社が手がけるのはPWR(加圧水型)であり、合併によるシナジーが少ない。しかもWH社は、同じくPWRを手がける三菱重工との提携が長かった企業であり、東芝との関係性は薄い。
身売りとなったWH社に対して買い手がつかず、最終的に東芝に話が回ってきたと話す業界関係者もいる。安易な業績拡大を狙った経営陣が、無理な買収に走った可能性は否定できない。そうなのだとすると「チャレンジ」と称して利益のかさ上げを強要していたという今回の会計問題と根は同じということになる。
新経営陣は、過大なのれん代をかかえる同社の資産内容について、できるだけ早期に明確な説明をする必要があるだろう。
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