ニュースの教科書

ジャーナリストが記事にできないホンネやつぶやきを集めた脱力系ニュースサイト

日経によるFT買収。読者層が異なる媒体でシナジー発揮できるのか?

 

 日本経済新聞社は2015年7月23日、英国の経済紙フィナンシャル・タイムズ(FT)を買収すると発表した。買収金額は、8億4400万ポンド(約1600億円)で日本企業よる海外メディアの買収としては最大規模となる。

nikkeifinancialtimes

 FTは高いブランド力を持った英国の経済紙で、世界各国に読者を抱えている。ただ高級紙であることから発行部数は少なく、グループ全体で約74万部しかない。年間の売上げはわずか640億円と企業そのものは小規模だ。
 FTを所有している英ピアソンは、グローバルに教育事業を展開する巨大企業だが、今後、教育事業への集中化をさらに進める方針といわれる。事業全体とのシナジーが薄いメディアを売却するのは自然な流れといえるだろう。
 一方、日経は、FT買収を通じてデジタル化とグローバル化を推進していくと説明しているが、買収の狙いは今ひとつはっきりしない。

 FTは英国の新聞だが、英国内より国外の読者の方が多い。米国の新聞は、どうしても視点が米国中心になってしまうが、FTは各国のバランスが考慮されており、ある意味でもっとも中立性の高い媒体のひとつである。このため、グローバルな環境で仕事をする知識層の多くがFTを購読しており、読者層の価値が高いことは間違いない。

 一方、日経の読者のほとんどは、日本国内に住む日本人である。1カ国で300万人の読者を確保するためには、大衆向けの記事も多数必要となり、FTのような高級紙として存在することは難しい。実際、日経の紙面は、FTをはじめとする欧米高級紙と比較すると大衆路線が徹底されている。

 現実点では日本経済新聞とFTの読者層が大きく異なっており、シナジー効果を発揮するのが難しい状況にある。FT記事の日経への配信を強化することで、媒体のブランド力を高める効果を狙うにしては1600億円の買収金額は高い。
 一方、アジアの知識層向けに事業を拡大するといっても、高級路線を維持する限り、そのポテンシャルは限定的となる。

 日経はこれまで盤石の財務体質を誇ってきたが、今回の買収をきっかけに、金融機関からの借り入れが一気に増加する。早いタイミングで、今後のグローバル戦略を提示できなければ、FT買収ののれん代が、財務的な重しとなってくる可能性も否定できない。

 - マスコミ, 経済 , , ,

  関連記事

kawase201301
JPモルガンの佐々木氏がとうとう見通しを変更。今回の円安転換はホンモノかもしれない。

 為替市場において円安がさらに加速しそうな勢いだ。安倍首相による日銀に対する緩和 …

gunosi
ニュース・キュレーションのグノシーが上場。広告媒体として機能することが明らかに

 スマホ向けにニュース・キュレーション・サービスを提供するグノシー(Gunosy …

satsutaba02
預金封鎖と財産税が密かな話題となっている背景とは?

 終戦直後に実施された預金封鎖と財産税がちょっとした話題になっている。NHKが夜 …

hondajet
ホンダがジェット機の量産を開始。あえて選択したイノベーション路線は吉と出るか?

 ホンダの航空機事業子会社であるホンダエアクラフトカンパニーは2014年5月20 …

shirakawae
前原大臣が白川総裁とガチンコ対決。日銀はいつまで粘れるか?

 本日(5日)開催されている日銀の金融政策決定会合に、前原誠司経済財政相が出席し …

skymark02
日本初のLCCだったはずのスカイマークが、LCCとの競争で経営難の皮肉

 国内航空3位のスカイマークの経営が悪化している。格安航空会社(LCC)との競争 …

factoryline
全世界的に製造業が回復基調。9月の量的緩和縮小の可能性が高まる?

 全世界的に製造業の景況感が改善してきている。米供給管理協会(ISM)が発表した …

marugen
丸源ビルのオーナーが検察を徹底批判。死んだら全財産を国に寄贈の考えは変わったか?

 銀座などの歓楽街で「丸源ビル」を展開する不動産グループの経営者で、脱税容疑で逮 …

Thatcher
構造改革路線の生みの親、英国のサッチャー元首相が死去

 英国の元首相で「鉄の女」ともいわれたマーガレット・サッチャー氏が4月8日、脳卒 …

ur
URの杜撰な事業が浮き彫りにする、官に依存した日本経済の麻薬中毒的体質

 「日本経済の復活」「大胆な規制緩和」といった安倍政権の輝かしいキャッチフレーズ …