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経済財政白書が指摘する、日本の労働生産性とイノベーションの問題

 

 政府は2015年8月14日、2015年度の経済財政報告(経済財政白書)をまとめた。アベノミクスの成果を強調する一方、実質賃金が伸び悩んでいる現状を指摘する内容となった。日本経済の課題としては、労働生産性とイノベーションを取り上げている。

keizaihakusho2015

 白書では、日本経済の現状について、2012年末に持ち直しに転じ「デフレ状況ではなくなった」と分析している。また、経済の好循環が着実に回り始めており「四半世紀となる良好な経済状況」にあるという認識を示した。
 一方で、実質賃金が上昇しておらず、低所得者層を中心に消費が抑制されつつある状況についても指摘している。17日に発表された4~6月期のGDPはマイナス成長だったが、個人消費の低迷が足を引っ張っており、まさに白書の指摘する通りになっている。

 中長期的な課題としては、日本経済の生産性の低さやイノベーションの問題に言及した。
 よく知られているように日本企業の労働生産性は他の先進国に比べて低い水準にとどまっており、これが順調な成長を妨げている。白書では、特定産業の生産性を向上させるのではなく、各産業がそれぞれ生産性を向上させる方が、経済全体への効果が大きいとしている。そのためには同一産業内で、生産性の高い企業に人材をシフトする必要がある。

 しかし日本企業における雇用者数の伸びを見てみると、高収益企業における雇用者数の伸びと、低収益企業の雇用者数の伸びの差は、年々縮小している。生産性の低い会社が余剰人員を抱えたままとなっており、これが各産業における全体の生産性を引き下げている。
 白書では、労働市場を流動化し、高い生産性を持つ企業への人材シフトを円滑化する必要があると指摘している。

 イノベーションについても同様である。日本における研究開発費の対GDP比は米国を上回っているが、現実の経済成長には結びついていない。つまり、研究開発についても効率が悪い状態が続いているのだ。
 特許の国際出願に占める国際共同出願の割合は低い水準にとどまっており、研究開発が国内だけで完結している可能性が高い。研究開発投資を経済成長に結びつけるには、研究開発体制をよりオープンにする必要があると白書は指摘している。

 こうした改革は、量的緩和策や財政出動といったマクロ政策に比べて地味であり、しかも実施には困難が伴う。このため日本では、表面的に議論されることはあっても、ほとんど実行に移されることはなかった。

 だが、米国やドイツなど、高成長を維持している国の多くは、こうした取り組みを地道に行っている。市場に期待に働きかけるアベノミクスの初期段階はすでに終了していることを考えると、そろそろ腰を据えた議論が必要である。

 - 経済 ,

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