ニュースの教科書

ジャーナリストが記事にできないホンネやつぶやきを集めた脱力系ニュースサイト

皆さん!中央銀行の独立性について根本的に誤解していませんか?

 

 2~3%の高いインフレ目標の設定と、日銀による国債引き受けに言及した自民党の安倍総裁の発言に対して、日銀の白川総裁は間髪入れずに反対の意見を表明し、安倍氏は前言撤回に追い込まれた。

 白川総裁の発言に対して、エコノミストなど経済専門家から支持する声があがったほか、マスコミの論調の多くが「日銀の独立性を守るべき」というトーンで一致した。白川総裁やそれを取り巻く専門家、マスコミが、安倍氏の発言を切って捨てたことから自民党関係者が真っ青になり、安倍氏はすべての発言を撤回するハメになったわけである。

 安倍氏の発言は内容をよく理解して行われたものとは考えにくく、疑問点も多い。だが仮にも次期首相になる可能性の高い有力政治家の発言である。国民から直接選ばれているわけではない日銀総裁が、間髪入れずに首相候補の政治家の発言を切って捨てるというのは本来あってはならないことである。米国など民主国家なら、即退任という重大事件となるだろう。
 だが民主主義が未成熟な日本では、高学歴者の官僚やそれを取り巻く専門家、マスコミの記者などが国民から選ばれた議員よりも立場が上という不思議な現象が起こる。安倍氏は虎の尾を踏んでしまったのである。

 ところで官僚や専門家と称する人たちが金科玉条のように語る「日銀の独立性」だが、多くの人が根本的に誤解している。おそらく官僚や専門家は誤解していることを知りつつ、あえてそれを修正しない。

 中央銀行の独立性というのは「錦の御旗」のような絶対的なものではない。民主主義国である以上、本来は民意をもとに金融政策を決めなければならない。民意で選ばれない組織に権限を与えることは原則としてあってはならないし、大変危険なことでもある。
 だが一方で民主主義は時に衆愚政治に陥り、紙幣増刷といった安易な政策に走りがちである。それを避けるための苦渋の決断として中央銀行の独立性がある。
 また独立性の範囲にもいろいろな考え方がある。金融政策の方向性までは政治が決定し、具体的な実現手段については中央銀行が独立して行うというのも標準的な独立性の一つである。金融政策の目標設定まで中央銀行が独占すると決められているわけではないのだ。

 どうも日本人はこういった抽象度の高い議論が苦手のようである。これと似たような事例は過去に何度もあった。代表的なのが自衛隊のシビリアンコントロールである。
 本来の意味は、軍隊という危険なツールは、十分に国民からの支持を得た人が指揮しなければならないという内容である。だが日本人はこの意味がよく分からず、文民統制などという意味不明な訳語を作り、制服軍人でない人が指揮することと誤解してしまった。制服を着ていようがいまいが、国民から選ばれていない役人が勝手に軍を動かせば、それは完全にシビリアンコントール違反である。

 安倍氏本人はおそらくその意味を理解していないだろうが、安倍氏が問いかけたテーマは非常に重要なのである。金融政策のどの範囲まで民意で決定するのかという、民主国家における根源的な問いである。安倍氏の前言撤回事件をきっかけに、金融政策のあり方について、もう少しレベルの高い議論が展開されることを願いたい。

 - マスコミ, 政治, 経済

  関連記事

mox
プルサーマル計画の意義が薄れる中、震災後初となるMOX燃料が高浜原発に到着。

 関西電力高浜原発3号機で使用するMOX燃料(ウラン・プルトニウム混合酸化物燃料 …

takusin
タイで再びタクシン派と反タクシン派の政治対立が激化。タイ政治の日本との共通点とは

 タイで再び政治対立が激化している。タイ国会で与党が提出した恩赦法案に対して野党 …

kuroda
日銀による国債の「大人買い」で、大量のマネーはどこへ向かう?

 日銀は4月4日、これまでとは規模感の異なる大胆な金融緩和策を打ち出したが、市場 …

usakoyoutoukei201505
5月の米雇用統計は予想外に良好。景気の停滞はやはり一時的?

 米労働省が発表した5月の雇用統計は、市場予想を大幅に上回る結果となった。このと …

nyse
世界景気の後退を受けて下落が続く米国株。焦点は原油安のもたらす影響

 米国株式市場の下落が続いている。10月9日のダウ平均株価は、前日比334ドル9 …

girishashusho
ギリシャ側が完全敗北。EUが主張する構造改革案をほぼ100%受け入れへ

 ギリシャの金融支援をめぐり、ギリシャ側が提出していた構造改革案についてEU(欧 …

ichimanen
インフレが進むと実質的に増税となる「インフレ課税」って何だ?

 消費税増税を最終判断する時期が近付いてきたことで、増税の是非に関する議論が活発 …

smog
悪化する北京の大気汚染。本当に自動車の排気ガスが原因なのか?

 北京を中心に中国各地で大気汚染が悪化している。北京市内では、視界がほとんどきか …

facebookdown
フェイスブック利用者が近い将来一気に8割減という予測は現実的なのか?

 フェイスブックは伝染病のように消え去るという研究者の予測が話題となっている。フ …

meti03
650万円の生活費を2年支給するというベンチャー支援策が登場する背景

 政府が、起業を後押しするために、650万円の生活費を最長で2年間支給する制度を …