2016年度予算の概算要求はさらに大型化。財務省は前年度並みに減額したいところだが
財務省は2015年9月4日、2016年度予算の概算要求額を公表した。一般会計は102兆4099億円となり、2年連続で100兆円を超え、過去最大規模を更新した。財務省は財政再建を急ぐ立場から昨年度並みに査定を進めたい意向だが、政治的環境がそれを許さない可能性がある。
2015年度の予算査定では、101兆6806億円という大型の概算要求に対して、財務省は厳しい姿勢で査定に臨んだ。社会保障費と防衛費以外は軒並み前年度マイナスとなっており、最終的には予算総額を96兆3420億円に抑えた。税収が伸びたこともあり、国債発行額を4兆3870億円減らすことに成功している。
財務省としては、今年度の予算においても、要求額から5兆円ほど減額し、前年度をわずかに上回る水準に抑えたい意向だ。
政府は6月に財政健全化計画をまとめているが、以前から掲げていた基礎的財政収支の2020年度黒字化という目標は堅持された。一方で政治的配慮から10%以上の消費増税は封印しており、目標を達成するには、極めて高い成長率を実現するか、歳出削減を徹底するのかの二者択一となっている。目先、高い経済成長は見込めないことから、財務省としては、歳出の削減をさらに進めたいところである。
だが、今年度は政治的状況がそれを許さない可能性がある。安倍政権の支持率が低下する中、来年夏の参院選を意識した動きが与党内で活発化しているからである。
4~6月期のGDP(国内総生産)がマイナス成長だったこともあり、すでに大型の補正予算を求める声が出ている。それに続く、来年度予算に対しても大型化の要求が出てくることはほぼ確実である。
内閣府の試算では、名目3%程度、実質2%程度の高成長が続いても2020年度の基礎的財政収支は6.2兆円の赤字となる。ただこの試算は税収を低めに見積もっており、企業業績が堅調に推移すれば、赤字幅を削減することは可能だ。
財政再建をどれだけ実現できるかは、企業業績の推移とそれに伴う税収に大きく依存することになる。企業業績向上の手っ取り早い方法は賃金の抑制である。来年以降は、安倍政権の目玉の一つだった賃上げも、影を潜めているかもしれない。
関連記事
-
-
金融庁の強い意向で毎月分配型投信の販売が減少。それでも顧客は毎月分配型を望む?
投資信託の販売が急速に落ち込んでいる。アベノミクスによる株価上昇が一段落したこ …
-
-
エイベックスによるJASRAC離脱。独占が崩れるきっかけになるか?
長年にわたって日本の音楽著作権管理を行ってきた日本音楽著作権協会(JASRAC …
-
-
イエレン議長が1期で退任の可能性が高まる。後任によってはリスク要因にも
米FRB(連邦準備制度理事会)のイエレン議長が2018年2月に1期で退任する公 …
-
-
党大会開催で厳戒態勢の北京でも反政府活動が発生。共産党支配の限界が露呈している
中国では8日から共産党大会が開催されており、首都北京では厳戒態勢が敷かれている …
-
-
2016年4~6月期GDPは事実上ゼロ成長。財政も需要の先食い状態が続く
内閣府は2016年8月15日、2016年4~6月期のGDP(国内総生産)速報値 …
-
-
貿易赤字は一定水準でほぼ安定。やはり円安は輸出増加に寄与せず
財務省は2014年10月22日、9月の貿易統計を発表した。輸出額から輸入額を差 …
-
-
貿易戦争?中国がEUの関税措置に対する報復として、欧州産ワインを標的に
中国商務省は6月5日、欧州産ワインが中国で不当に安く売られているという業界から …
-
-
コアコア指数もとうとうプラス転換。輸入価格の上昇でとうとう本格的インフレがスタート?
日本経済は長期にわたるデフレが終了し、インフレへの転換が始まった可能性が高い。 …
-
-
日本メーカーによるグローバルな「コバンザメ商法」は上手くいくか?
重電の分野では、巨額のM&Aを軸にグローバルな再編が急ピッチで進んでい …
-
-
李克強首相が中国経済の運営に自信。欧米経済の回復を追い風にバブル封じ込めか?
中国の李克強首相は、大連で開かれている夏季ダボス会議で講演を行い「中国経済のフ …