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安全保障関連法成立。だが国会を支配していたのは「昭和」な価値観

 

 今国会、最大の焦点であった集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法案は2015年9月19日未明、参議院本会議で可決、成立した。戦後日本の安全保障政策は大きく転換することになる。

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 安全保障関連法はひとつの法律ではなく、新法である国際平和支援法と、自衛隊法や事態対処法など複数の法改正の総称。最大の焦点となっていたのは、いうまでもなく、集団的自衛権の行使を可能とすることについての是非であった。
 例えば事態対処法では、集団的自衛権の行使が可能となる事態について「わが国と密接な関係にある他国への武力攻撃により、わが国の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」が発生した時と定義しており、米国が攻撃対象となった場合には、日本も自衛権を行使できることになる。

 集団的自衛権の行使は、20年以上も前から米国が日本に求め続けてきたものだったが、日本はこれまで頑なにこれを拒否してきた。安倍政権になってその方向性が一気に変わったわけだが、皮肉にも日本が集団的自衛権の行使に前向きになった時、米国はすでに安全保障政策を大きく転換させてしまっていた。

 米国はかつてのように、世界の警察官としてふるまうつもりはなくなっている。オバマ政権は過去最大規模の軍縮を行っており、米軍の活動範囲を大幅に縮小している。沖縄はかつては海兵隊最大の拠点の一つだったが、米軍は沖縄から次々と撤退しており、現在の拠点ははるか後方のグアムである。
 日本では辺野古の基地が最大の政治問題となっているが、当の米国は、実は日本近海から急速に手を引きつつある。

 つまり、今回の安全保障関連法は、米国が日本の後ろ盾ではなくなりつつある状況下における日米安保の再定義という位置付けになる。これまで米国は無条件で日本の同盟国だったが、今後は、国益次第で日本との関係は変わる可能性が出てきたのである。だが国会における与野党の論戦は、冷戦時代の価値観を引きずる非常にアナクロニズムなものであった。

 与党側は、安全保障関連法を成立させれば、無条件で日米安保と日本の安全が確保されると錯覚している。一方、法案の反対派は、これによって日本が「米国の戦争に巻き込まれる」といった論説を繰り返していた。法案に対するスタンスは正反対だが、米国が無条件で日本と一体になっているとの認識は共通である。だが、こうした基本的認識は、アジア太平洋地域の現状を正しく反映しているとは言い難い。

 今月、中国の習近平国家主席は2度目の米国訪問を実施する。米国と中国は数年にわたる長期交渉を続けているが、安全保障面における最大のテーマは、米国と中国の勢力範囲をどこに設定するのかという問題である。
 中国は、沖縄から台湾までのラインを自国の防衛圏内に入れようとしている。一方、米国は日本と一定の距離を置き、沖縄を最前線として限定的な勢力下に置こうとしている。米国にとって重要なのは日米関係ではなく、米中関係であり、日本の安全保障は、米中交渉の行方にすべて依存しているというのが現実なのだ。

 戦後日本の平和が、憲法ではなく、米国の「核の傘」によって実現されてきたというのはまぎれもない事実だが、一方、米国による核の傘は、すでに半分は失われた状態にあるのもまた事実である。そして与野党とも、雨は降らないと思っているという点では完全に一致している。

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