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首相がブチ上げたGDP600兆円という目標は、すでに出ている数字の言い換え

 

 自民党は2015年9月24日、両院議員総会を開き、安倍首相の党総裁続投を無投票で決定した。安倍氏はGDP(国内総生産)を600兆円にするという目標を掲げ、経済を最優先にする方針を明確にした。だが、提示した目標は、すでに出ている数字を言い換えたものに過ぎず、目新しさに欠けるものとなった。

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 現在、日本の名目GDPは約490兆円となっている。これを600兆円にするためには経済規模を約1.2倍に拡大する必要がある。安倍氏は「ニッポン一億総活躍プラン」を作り、2020年に向けて実現に全力を尽くすと述べているので、メドとなる時期は2020年と考えられる。2020年までにGDP600兆円を達成するためには、約3%の成長を実現すればよいということになる。

 安倍政権が掲げた経済政策(アベノミクス)は、もともと、名目3%の成長を目指すというものであった。これを基準にすると、今回のGDP600兆円という目標は、これまで掲げてきた数値を言い換えたものであり、本質的には何も変わっていないということになる。

 もっとも、「3%の成長を目指す」ことと、「2020年までに600兆円を実現する」ことを目標として掲げることには政治的に大きな違いがある。数値目標を掲げてしまうと、それが達成できない場合には、政治的な責任が生じてしまうからだ。その点では、これまでよりも踏み込んだ発言ということになるのかもしれない。

 内容的には目新しさはないものの、現実問題として600兆円を実現するのは、政権発足時と比較すると、かなり難しくなってきている。
 政権発足後の名目GDP成長率は2013年度が1.8%、2014年度は1.6%だった。この数字は量的緩和策による円安と公共事業によって実現してきた。2020年度に600兆円を達成するためには、さらに高い成長率を毎年、継続しなければならない。

 産業構造の転換を促し、生産性を向上させる施策が理想的だが、数字として具現化するまでに時間がかかることや、基本的に国民が望んでいないことから、これは対象外と考えられる。即効性がある政策ということになると、やはり追加緩和や大規模な公共事業といったところになるだろう。
 政府は2020年までに基礎的財政収支を黒字化するという財政再建目標を掲げており、大規模な公共事業を継続する余力は少ない。財政支出を伴わない政策という意味では、追加緩和の実施と賃上げの組み合わせとなる可能性は高い。

 追加緩和を実施し、円安をさらに進めれば、見かけ上の経済規模を拡大させることはそれほど難しいことではない。また今年度以上に企業に賃上げを求めれば、名目上の所得は増加する。原油価格がこれ以上、下落しなければ、3%の継続成長も不可能ではない。

 ただ生産性の上昇が伴っていないので、賃上げ分はすぐに物価に吸収されてしまう可能性が高く、国民の生活水準の向上にはつながらない。またさらなる円安は国民の購買力をさらに低下させてしまう可能性がある。目標値を達成することと、実質的な豊かさの追求は別なものと考えた方がよさそうだ。

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