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パソコン終焉の象徴。HPが1兆円の巨額赤字を計上。不正会計が理由にあらず

 

  米コンピューター大手ヒューレット・パッカード(HP)が巨額赤字を計上した。2012年8~10月期決算は68億5400万ドル(約5500億円)の赤字。これを受けた通年の決算は、売上高1,203億ドル(約9兆6000億円)、最終利益は126億5000万ドル(約1兆円)という巨額赤字となった。同社は、買収した英国のソフトウェア子会社Autonomy社で売上げ水増しなどの不正会計が発覚し、88億ドルの減損処理が発生しことなどを赤字の主な原因と説明している。

 だが実態はかなり異なる。2011年10月期の決算と比較すると、全体の売上高が5%低下しているにも関わらず、コストは12%も増加している。これはAutonomy社の減損分をはるかに上回る水準である。また商品の原価率もわずかではあるが上昇している。

 つまり今回の赤字は、売上減、原価上昇、コスト増加が組み合わされたもので、ハードウェア事業を中心とする同社のビジネスモデルが構造的に儲からない状況になってきたことが原因である。特に主力のパソコン部門の低迷がひどく、売上げが10%ダウンした。プリンタやストレージ、企業向けソリューションなど他の分野でも売上げが減少している。

 HPはサーバーなどを主力商品とする旧HP社とパソコン大手のコンパック社が合併して出来たハードウェア・メーカーの巨人である。コンパックはHPとの合併前にデジタルイクイップメント社、タンデムコンピューターズ社なども吸収合併しており、現HPは、IBM以外の企業向けハードウェア・メーカーがすべて結集した会社といってよい。

 名門HPが苦境に立たされている背景にあるのはズバリ「パソコンの終焉」という時代の流れである。アップルのiPadなどに代表されるタブレットPCが急成長し、従来型のパソコンは完全に時代遅れとなっている。少なくともパソコンはコンシューマ向けの主力ハードウェアではなくなりつつある。
 パソコン基本ソフト大手のマイクロソフトは、最新のOSであるWindows8において、タブレットPCを念頭に置いたデザインに全面的に切り替えた(本誌記事「パソコンが消滅する?Windows8が示すパソコン時代の終焉」参照)。タブレットPCはソフトとハードが一体化している方が有利であることから、ハード専業メーカーは苦しい立場に追い込まれる。

 もっとも日本の電機メーカー各社と異なり、HPには企業向けハードウェアという優良資産が残っている。企業向けハードウェアは、一時は水平分業が進んだものの、現在では垂直統合化が急激に進んでいる。HP単体での抜本的なリストラに加えて、オラクルなどハードを持たない(同社は一部ハード部門を保有しているが)ソフト会社との電撃的な合併という選択肢もまだ残っている。

 HPの巨額赤字は、アップルの登場で激変した米国IT業界の構造転換を加速させることになるだろう。

 - 経済, IT・科学

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