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厚労省のマイナンバー収賄事件。汚職の温床となりやすい官庁の調達制度とは?

 

 マイナンバーに関する事業をめぐり、業者から現金100万円を受け取った収賄の罪で厚生労働省の室長補佐が逮捕された。
 ヤクザ風の派手な風貌や、高卒で厚労省に入り、異能のノンキャリとして活躍した経歴が話題になっているが、汚職の温床となりやすい、官庁の調達制度については以前から手つかずのままである。今回、逮捕された中安一幸容疑者のような人物が担当者になってしまうと、容易に汚職が行われてしまうという構造的な問題がある。

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 官庁の調達には大きく分けて2つの種類がある。ひとつは「入札」でもう一つは「随意契約」である。入札は、複数の業者に同時に価格を提示させて安い方を採用するという方法。もうひとつは、官庁側が自由に裁量で決定する方法である。細かい調達方法の違いはあるが、原則として官庁の調達は両者のうち、どちらかに属することになる。

 入札は、価格を提示させるだけなので、仕組みが簡単であり、多くのケースで入札が採用されている。しかし物品のようなものであれば問題はないが、複雑なサービスを調達する場合には、単純に価格だけで決められないこともある。その場合には、随意契約が用いられる。

 今回、中安容疑者が逮捕されるきっかけとなったマイナンバー関連の案件は2つあるが、両方とも随意契約である。ひとつはシステム連携のための要件定義でもうひとつは仮想環境の構築なので、単純な製品納入ではなく、発注側と密なやり取りが必要となる。そのため、企画書を事業者に提出させ、その中から優秀なものを選ぶという「企画コンペ」方式が採用されたものと考えられる。

 随意契約は以前から汚職の温床になりやすいとして、できるだけ入札にするよう指導が行われているが、必ずしも随意契約だから汚職がはびこるというわけではない。そもそも民間では、一部の事業者を除いて、入札システムを採用しているところは少なく、すべての案件が、官庁でいうところの随意契約である。

 だが民間でこうした汚職が起こりにくいのは、社内でのチェック体制が厳しいことと、成果という形で事後検証が行われるからである。企業は「儲け」を出さなければならないので、必然的にお金をしっかりと使ったのかチェックするということが、業務の一環として組み込まれている。

 しかし官庁は国民からの税金で運営しているので、こうした感覚は希薄である。官庁の調達は、事後に検証が行われることはほとんどなく、調達の結果がどうたったのかはほとんど問われない。
 また、人事が完全な年功序列型で、一生涯の給与があらかじめ保証されている。成果で給料や昇進が決まるということがなく、そもそも仕事の成果を検証するという概念がない。
 入札であっても、随意契約であっても、悪意のある担当者がその気になれば汚職は可能という構造的問題が生じる根本的原因はこのあたりに存在している。これを放置したままで、対症療法的な防止策を講じても、抜本的な解決にはならない可能性が高いだろう。

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