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企業に設備投資を要請する官民対話。企業の財布は便利な財源?

 

 政府は2015年10月16日、企業に設備投資を促すための官民対話の初会合を開催した。安倍政権はこれまで企業に対して賃上げを強く要請するなど経営への介入を続けてきたが、賃金に続いて設備投資の増額も要請した形だ。

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 対話の名称は「未来投資に向けた官民対話」となっているが、未来の投資について話し合う場というよりは、政府が企業に対して設備投資を増やすことを強く要請する場と考えた方が実態に近い。

 会議では安倍首相が「戦後最大の経済、GDP600兆円を実現するため、生産性を抜本的に高め、供給制約を克服してまいります。企業収益は過去最高となりましたが、投資の伸びは十分ではありません。今こそ企業が、設備、技術、人材に対し、積極果敢に投資をしていくべき時であると思います」と述べ、企業に対して投資を加速するよう要請した。

 甘利経財相も、日本企業の設備は老化が進んでいるとして、積極的に設備投資を実施するよう促す発言を行った。
 政府側が根拠にしているのは、2014年度末で354兆円に積み上がった企業の内部留保。このうち210兆円は現預金となっており、企業はこうしたキャッシュを有効活用していないという主張だ。
 日本企業が積極的に投資を行っていないのは事実だが、産業界側は有効な投資対象がないから投資ができないというスタンスであり、議論は堂々巡りとなっている。

 企業の受け身の姿勢が目立つ一方、政府側の経済界に対する要請が矛盾しているのもまた事実である。安倍政権は経済界に対して異例の賃上げ要請を行い、企業側は少額とはいえ、2年連続でこれに応じてきた。
 さらに政府はコーポレートガバナンス改革を通じて、企業に対して株主に利益を還元するよう強く求めている。背後にあるのは、厳しさを増す年金財政である。公的年金は日本企業の株式のかなりの割合を保有しており、株主還元を高めないと国民の年金給付額が減少してしまう。

 株主還元と賃上げは基本的に矛盾する概念だが、安倍政権はその両者を強く企業側に求め、さらに今回、設備投資の拡大も要請している。
 かつては、国債を発行して政府支出を拡大することが容易であり、政府の景気対策はもっぱら公共事業であった。だが政府は2020年度に基礎的財政収支を黒字化するという公約を掲げており、無尽蔵な国債発行が難しくなっている。このため政府は、内部留保を抱える企業に対して支出を強く求めるようになっており、かつての国債が企業の財布に変わっただけと見ることも可能だ。

 このところ足元の景気が悪くなっており、7~9月期のGDP(国内総生産)は4~6月期に続いてマイナスになると予想する専門家も増えている。7~9月期のGDPが良くない数字だった場合、企業に対する要請はさらに強まることになるだろう。

 - 政治, 経済 ,

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