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公的年金の7~9月期の運用損失は7兆円?場合によっては政治問題化も

 

 公的年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が抱える運用損失が話題となっている。ネット媒体などでは7~9月期の損失が8兆円から10兆円に達すると報じられているが、実際の株価の動きとGPIFのポートフォリオを考えれば当たり前の数字であり、特に驚くべき状況ではない。
 ただ、国民の年金が株価と連動する状況になっていることは、あまり知られておらず、具体的な数字が明るみに出ることで政治問題化する可能性がある。

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 現在、GPIFは140兆円ほどの資金を運用している。安倍政権は、今後インフレが進行する可能性があることから、公的年金の運用方針の見直しを進めてきた。昨年10月にまとまった新しい運用方針で は、国債の比率が60%から35%に低下し、国内株の比率が12%から25%に増加している。外国株を合わせると40%が株式というポートフォリオだ。

 ただこうした運用方針の見直しは、株価対策という面があることは否定できない。実際、GPIFのポートフォリオ変更に伴って巨額の資金が株式市場に流入し、株高が演出されてきたのは事実である。

 年金運用資金の約半分が株式に投入されていれば、当然、年金積立金の運用は株価に依存することになる。2015年4~6月期の運用実績は株価の上昇によって2兆6489兆円のプラスとなった。
 一方、7~9月期は世界的に株価下落に見舞われており、当然、その分だけ運用損失が発生する。6月末時点におけるGPIFの日本株の比率は23.4%、外国株の比率は22.3%、合計すると45.7%が株式で運用されている。この間、日経平均は約14%、ダウ平均株価は約8%下落している。外国株が米国株のみと仮定し、単純にこの数字を当てはめると約7兆円ほどの損失が発生している計算になる。

 GPIFでは日本株の期待リターンを約6%、1年間で想定されるリスク(ボラティリティ)を最大 (2σ=確率95%)で±50%としており、外国株もほぼ同様の数値が想定されている。年間の想定最大損失は30兆円に達する計算となるので、今回の数字は特に驚くべきものではないという解釈が成立する。

 ただ金融工学的にはそうであっても、この事実は国民の間に周知徹底されているとは言い難い。7~9月期の運用実績の公表は11月中だが、具体的な数字が明るみに出ることでショックが拡がり、政治問題化する可能性は否定できない。

 今日は日本郵政グループの上場日だが、政府内部ではGPIFに続いて、ゆうちょ銀行の運用資金の日本株投入に期待する声も大きい。だが、GPIFの損失が明らかになれば、ゆうちょ銀行の資金を活用した株高シナリオも見直しを余儀なくされるかもしれない。

 - 政治, 経済 ,

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