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ミャンマーで歴史的な政権交代へ。だがスー・チー氏にとっては過大山積

 

 50年以上にわたって軍による独裁政権が続いてきたミャンマーで2015年11月8日、総選挙が実施され、アウン・サン・スー・チー党首率いる野党、国民民主連盟(NLD)が政権を握ることが確実になった。歴史的な政権交代だが、NLDにとっては過大が山積している。

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 ミャンマーでは1960年代から軍事政権が続いているが、アウン・サン・スー・チー党首の父親はミャンマー(ビルマ)建国の父と呼ばれるアウン・サン将軍で、現在の軍部の基礎を築いた人物である。
 アウン・サン将軍はミャンマーの独立を見届けることなく暗殺され、娘のスー・チー氏は英国に渡ったが、スー・チー氏はその後、再びミャンマーに戻り、同国における民主化運動のリーダーとなった。彼女の一連の活動には、独立後もミャンマーの内政に干渉したいと考える、旧宗主国・英国の意向が大きく関係しているといわれる。

 軍事政権が続いたミャンマーでは、過去にも総選挙が行われたが、スー・チー氏が率いるNLDが圧勝したため、軍部はスー・チー氏を拘束して自宅軟禁状態にするなど、民主化運動への弾圧を繰り返してきた。
 ミャンマーの議会は、4分の1の議席を非改選の軍人議員が占めており、この部分は選挙で動かすことができない。政権交代を実施するためには、残りの議席において圧倒的に勝利する必要があるが、今回の選挙で単独過半数となるのはほぼ確実な状況だ。

 スー・チー氏は軍とテイン・セイン大統領に書簡を送り、スムーズな政権移譲を行うよう要請している。軍事政権側はこれを受け入れる見通しで、歴史的な政権交代が実現することになる。

 ただ政権を獲得するNLDにとっては過大が山積である。スー・チー氏は英国人と結婚しており、息子2人も英国籍となっている。ミャンマーの憲法では、親族に外国籍の人物がいる場合には大統領になれないという規定がある。
 これはスー・チー氏を大統領にしないためのものといわれているが、憲法改正には4分の3の賛成が必要であり、現時点で憲法を改正することはほぼ不可能である。また、憲法では軍部の非常大権を認めており、最終的には軍部が民意を無視して、実力行使をすることが可能となっている。

 政治的には、これまで民主化運動で覆い隠されていた少数民族問題が顕在化する可能性がある。ミャンマー西部では、多数派の仏教徒が、少数派のイスラム教徒を大量虐殺するという事件が多発しているが、現在の軍事政権もスー・チー氏もこの件については黙殺を続けている。
 民主国家となったミャンマーがこの問題を無視することはできないはずだが、ミャンマー人の中には少数民族に対する根強い差別意識があり、政治的に解決しようとすれば、今度はNLDが国民からの支持を失う可能性がある。

 スー・チー氏は、別の人物を暫定的に大統領に就任させ、自身が全権限を握るとしている。だが不安定な状態での政権運営は避けられず、この状況で少数民族問題を含めた政治の舵取り行うのは、かなりの難題といえるだろう。

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