バフェット氏の最新の保有銘柄状況が明らかに。金利上昇と景気拡大にシフト
米国の著名投資家であるウォーレン・バフェット氏が、IBMやGM(ゼネラル・モーターズ)など製造業の銘柄を買い増す一方、ウォルマートの保有株数を減らしている。
米国は年内の利上げがほぼ確実となっているが、製造業へのシフトは、今後の米国経済の先行きを楽観視した結果である可能性が高い。
バフェット氏は長期的な視点に立って投資する投資家として知られており、同氏のポートフォリオは、マクロ経済動向との関連性が高い。
同氏が率いる投資会社バークシャー・ハサウェイが米証券取引委員会(SEC)に提出した9月末時点における四半期報告書によると、6月末時点から保有株数が増加したのは、IBM、ゼネラル・モーターズ、AT&Aなどであった。一方、ウォルマート・ストアーズ、ゴールドマン・サックスは株数を減らしている。他の銘柄は基本的に保有株数に変化はない。
これまで米国経済は好調と言われながらも、量的緩和策が継続しており、リーマンショック後の後遺症から抜け出せない状況が続いていた。しかし、米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)は昨年11月、とうとう量的緩和策の終了を決定し、市場の焦点は利上げのタイミングに移っている。
ところが8月に中国ショック発生し、世界経済の不透明感が一気に高まったことから、株価が大幅に下落するという事態が発生。このため、FRBは9月、10月の利上げを見送る決断を行っている。だが最新の雇用統計が好調だったことから、FRBが年内に利上げに踏み切るとの見方が再び強まり、市場は正常化に向かって動き始めた。
景気が弱く、金利が低めに推移している状況では、小売やヘルスケア、通信などが相対的に有利になる。一方、景気が拡大し、金利も上昇する局面ではむしろエネルギーや製造業の株価が好調になる。
バフェット氏は、小売最大手のウォルマートを売却し、代わりにIBMとゼネラル・モーターズを買い増している。IBMはこのところ業績が低迷しており、株価もかなり下がっているが、今後の見通しは明るいとバフェット氏は感じているようだ。
AT&Tはどちらかというと、従来までのフェーズで強い銘柄だが、これはディレクTVの買収によって結果的に保有されたものであり、市場で買い付けたものではない。
総合すると同氏は、今後、米国の金利が上昇し、景気が順調に拡大すると予想している可能性が高い。この判断を行っているのは、中国ショックで不透明感が高まっている時期であり、もし同氏の判断がホンモノということであれば、やはり先見の明があるということになるだろう。
ちなみに同氏が「永久保有銘柄」と表現しているコカ・コーラ、ウェルズ・ファーゴ(地銀最大手)の株数は変わっておらず、引き続き保有を続けている。
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