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黒田総裁らしからぬ中途半端な補完措置。白川時代を彷彿とさせるという声も

 

 日銀が打ち出した「補完措置」をめぐって市場の混乱が続いている。追加緩和なのかそうでないのかがよく分からず、これをどう受け止めよいのかコンセンサスが出てきていないことが原因である。だが、結論から言うとこれは追加緩和ではない。

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 日銀は2015年12月18日、金融政策決定会合において、現在の追加緩和を補完するための措置(補完措置)の導入を決定した。具体的には、保有する国債の残存期間を2年延ばす、上場投資信託(ETF)の買い入れ枠をあらたに3000億円増額する、不動産投資信託(REIT)の銘柄ごとの買い入れ制限を緩和するといった措置が列挙されている。

 国債の平均残存期間を延ばせば、より長期の国債も購入できるようになるし、ETFの追加購入枠が設定されれば、日銀から供給されるマネーの総量が増えると想像できる。だが実際にはこれらの措置によって資金供給が増えることはない。

 国債の残存期間拡大については、追加緩和策の準備という解釈もできるが、現時点においては必ずしもそうはならない。保有している国債の償還が増加しており、償還分を考慮すると国債の買い入れ総量を増やさざるをえない状況にあるからだ。つまり現状を維持するために、残存期間の拡大策が必要ということになる。

 ETFやREITについても同様である。日銀はこれまで保有していた株式の一部を2016年から売却する方針だが、その金額は約3000億円となっている。売却が決まっている株式と入れ替わりで3000億円のETFを購入するので、これも現状維持策だ。
 REITについては、時価総額が小さく、大量購入するとすぐに大株主になってしまうという問題がある。現在の5%以内という制限では、これ以上購入できない銘柄が出てきてしまうため、制限を緩和せざるを得なかった。こちらも現状を維持のための施策と考えるべきだろう。

 前向きに解釈すれば、今後の追加緩和をやりやすくするための前段階ということにもなる。だが、現状維持のためにこれだけの施策を実施しなければならないということになると、むしろ日銀の手詰まり感を印象付ける結果になったともいえる。

 市場関係者の一部からは、白川前総裁の時代に逆戻りしたとの声も聞かれる。白川氏は、基本的に量的緩和策に否定的で、政治的圧力を回避するために、官僚的でテクニカルな手法を多用した。表面的には緩和しているように見えて、実際にはほとんど緩和を行っていないというやり方である。

 量的緩和策を継続するという基本政策は変わっていないので、白川時代に戻ったわけではないが、今回の措置には過去との類似性が感じられる。短期的には影響はないだろうが、こうした状況が続くことなった場合には、量的緩和策に対する市場の基本認識に変化が出てくる可能性もあるだろう。

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