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甘利氏辞任ではからずも注目されてしまった、政府最後の聖域「UR」という大問題

 

 甘利経財相は2016年1月28日、記者会見を開き、自らの金銭問題に対する責任を取って閣僚を辞任すると表明した。アベノミクスの司令塔でもあった甘利氏の辞任は政権にとって大きな痛手となる。
 ただ、甘利氏の辞任は、スキャンダルが発覚した時点から囁かれており、今のところ政権にとって致命的な状況とはなっていない。むしろ、今回の金銭スキャンダルが、独立行政法人都市再生機構(UR)に関するものだったことから、思わぬ展開となるリスクが意識され始めている。

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 これまで数多くの政府系組織が民営化の対象となってきたが、URだけは何回かの組織改編を経ながらも、しぶとく生き残ってきた。ある意味では最後の聖域のひとつともいえる組織である。

 URの前身である日本住宅公団や宅地開発公団は、住宅の取得が困難な労働者に良質な住宅を提供する目的で設立された。日本がまだ貧しかった昭和の時代には、それなりの成果を上げてきたが、日本が豊かになり、十分な住宅インフラが整ってからは、弊害の方が目立つようになってきた。

 政府系という圧倒的な立場を利用して、タワマンや高級都市物件などを多数手がけ、民間の不動産事業者の経営を圧迫しているとの声が年々高まっている。また、国土交通省などからの天下りの巣窟ともいわれており、現在では完全に利権のための組織になってしまっている。甘利氏が口利きすることができたのも、URがこうした政府系組織だからである。

 URはこれまで何度も民営化が検討されたが、いつも障壁になるのはその巨大さである。あまりにも大き過ぎて、リストラすることができないのである。

 URの資産総額は何と13兆円に達し、そのほとんどが開発した不動産などで占められている。政府などからの出資金で構成される自己資本はわずか1兆円しかない。URは独立行政法人なので市場メカニズムとは無縁だが、本来であれば、ごくわずかでも資産価格が下落すると、たちまち債務超過に陥る状況である。
 しかも、11兆円を越える莫大な負債のほとんどは、政府の財政融資資金からの借り入れである。つまり政府丸抱えの借金マシーンということになる。

 日本政府の財政問題が議論される時、決まって出てくるのが、日本政府は資産をたくさん持っているから大丈夫というというロジックである。URに対する巨額の債権も、日本政府が持つ資産の一部なのだが、現実にこの債権を回収することは不可能に近い。

 実はURというのは、いろいろな意味で日本が抱える矛盾をすべて内包した組織だったのである。甘利氏の辞任問題は、はからずもこの問題を表面化させてしまうリスクがある。
 少なくとも、安倍政権が成長戦略を謳っていながら、実はこうした政府の利権を温存していたという事実が明らかになることは、アベノミクス全体にとってマイナスの影響が大きいだろう。

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