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政治家も国民もみんなマスコミが大好き。電波停止に言及した高市発言の矛盾

 

 放送事業者が政治的公平性を欠く放送を繰り返した場合、電波停止を命じる可能性があるという高市総務相の発言が波紋を呼んでいる。
 だが、特定の事業者にしか放送免許を交付せず、テレビ局の絶対的な影響力をあえて維持している現状を変えようとう動きはほとんどない。結局のところ、テレビ局が強大な力を持つことを望んでいるのは、政治家自身であり、それを支持している国民でもある。

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 高市氏は、2016年2月8日の衆院予算委員会で、放送局が政治的な公平性を欠く放送を繰り返した場合、電波停止を命じる可能性があると発言した。この発言に対して、野党は激しく反発している。

 放送法では、政治的に公平であることを求めており、理屈の上では、公平性を欠く番組を放送した場合には、電波法に基づいて電波停止を命じることが可能である。しかし、民主国家には言論の自由という法律を上回る上位概念があり、こうした行使は原則として行うべきではないというのが民主国家における標準的な考え方である。

 だが日本の場合、こうした話以前の問題として、電波の免許が特定の事業者だけに独占的に配分され、テレビ局の絶大な影響力を国家があえて保証している。
 最近では、テレビの報道内容に対して批判が集まることが多いが、これだけの批判が集まるのは、テレビ局の影響力が絶大であり、テレビ局が一種の権力となっているからである。だがそうした状況を作っているのは、ほなからぬ政府である。

 こうした状況に対しては、以前から電波を一般に広く解放するよう求める声があり、構造改革に関する議論が活発だった小泉政権時代には、具体的な議論も多少進んだ。だが一連の改革はすべて頓挫し、テレビ局の圧倒的な影響力は維持されたままだ。

 もしインターネットと同様、電波へのアクセスを広く開放すれば、テレビの影響力はたちまち消滅し、政権がテレビの報道でイライラすることはなくなるだろう。ネットと同様、そこで提供される情報の公平性を法律で規制する必要もなくなるはずだ。だが一方で、自分達に都合のよい情報を流し、世論を誘導してくれる組織も存在しなくなってしまう。

 結局のところ強いマスコミを求めているのは政治家自身ということになり、そうであればこそ、特定事業者に電波を独占させる政策が維持されている。強大な影響力を持ったマスコミを手中に収めれば、自らに都合のよい情報を流し、世論を誘導できるからである。

 国民も多種多様な論調の中から必要なものを選択するよりも、寡占的な情報源を望んでいるように見える。さらにいえば、国民がマスコミに望んでいるのは「情報」などではなく、何らかの主義主張にお墨付きを与える「権威」である可能性が高い。
 こうした稚拙な政治環境では、本当の意味で公平な報道環境を実現するのは極めて困難であり、テレビ局の圧倒的な影響力は当分の間、維持されることになるだろう。

 - マスコミ, 政治 , , ,

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