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バイリンガル国家マレーシアにおける最大の課題は何と英語力不足

 

 バイリンガル国家として知られるマレーシアにおいて、理数系科目の授業を英語で行う政策が部分的に実施される。もっとも同国では、授業の英語化を行ったものの、現場の混乱や反対意見などから断念した経緯がある。

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 マレーシアは、マレー系、中華系、インド系などからなる多民族国家である。公用語はマレー語ということになっているが、同じ民族同士では母国語を使い、公共の場では英語が使われることが多い。
 したがって、ほとんどの人が何らかの形で英語を話せる環境にあり、実際、教育大手EF Education First社が発表している世界英語ランキングでも、同国はアジアでトップクラスの英語力を誇っている。これは英国統治時代が長かったことも大きく影響していると思われる。

 だが意外なことに、マレーシアにおける大卒者の課題は英語だという。同国では大卒者の25%程度が就職できないといわれているが、英語のスキル不足が原因となるケースが多いという。国民の9割が英語教育の強化を望んでおり、今回のプログラムを推進する背景にもなっている。

 ところが一連の英語プログラムはあまりうまくいっていない。政府は2007年に理数系の科目に限って英語で授業を行うプログラムを実施したが、現場は大混乱。マレー語を重視する人たちからの反対の声も大きく、プログラムは中断となった。

 今回は、前回の教訓を生かし、マレー語の水準や基礎学力の高い300の公立学校(小中高)のみに限定する方式とした。またプログラムは強制せず、最終的には学校側の意向で実施を決定するという。プログラムを受け入れた学校は、理科、数学、IT、通信、技術の科目について英語で授業を実施することになる。

 だが今回の政策についても、マレー語を重視する団体などが激しく抗議しており、これがすべての教育現場に拡大するのかは何ともいえない。

 マレーシアのような新興国は先進国とは異なり、国内に厚い産業基盤がない。グローバル企業への依存度が高く、非英語圏の先進国において求められる英語力とはかなり状況が違うだろう。だが事実上、公用語が英語となっている国で、大卒者の英語力が問題になっているというのは少々驚きである。

 世界最先端の技術や文化を持ち、世界から人やお金が集まってくる魅力的な先進国であれば、英語力はあまり問われない。英語である程度のコミュニケーションさえできれば、大きな問題は起きないだろう。

 だが、こうした基礎的魅力に欠ける国の場合、人の力で状況を切り拓く必要があり、そのためには高度な英語力が必須となる。
 問題は今の日本がどちらなのかということである。20年間であれば明らかに前者だったと思われるが、最近では状況が逆転していると考えた方が自然である。そうなってくると、マレーシアのように半分、母国語を捨てても、英語教育を行うという考え方も出てくるかもしれない。

 母国語教育を捨てると確実にその国の文化水準は低下する。しかし、経済的に貧しくなってしまっては、最低限の文化すら維持できなくなってしまう(貧しい国は文化財の保護すらままならない)。
 日本人が、美しい日本語や日本文化を捨てずにいるためには、圧倒的に高い国際競争力を維持する必要があるが、現状維持ばかり重視する今の日本社会においてこれを実現するのはかなり難しいだろう。

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