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認知症JR事故、家族には賠償責任はないとの最高裁判決。ようやく当たり前の社会に

 

 認知症の高齢者が列車にはねられ、鉄道会社に損害を与えた場合における家族の賠償責任が争われた裁判で、最高裁判所は家族に賠償責任はないとする初の判断を下した。これから介護が本格化する社会において極めて妥当な判決といえるだろう。

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 2007年、愛知県で認知症の男性が1人で外出してしまい、列車にはねられて死亡した。JR東海は列車に遅れが出たとして、男性の妻(93)と長男(65)に約720万円もの支払いを請求した。

 民法では認知症など責任能力のない人の賠償責任は監督義務者が負うとされている。裁判では、妻と長男が監督義務を負うかどうかが争われた。
 妻は高齢で自らも要介護認定を受けており、長男は同居していない状況だったが、介護施設からのデイサービスを受けるなど、一般的な介護の体制は組まれていたという。

 最高裁は、民法の扶助義務は家族相互のものであり、第三者に対する賠償責任を意味したものではないとし、家族の監督者義務はないとの判断を下した。ただ、相互の関わり方によっては責任が生じる場合もあるとし、今回のケースでは責任は生じないとした。

 この裁判は日本が抱える根本的な矛盾を浮き彫りにした典型例といえる。自身の生活については、本人が自己責任で管理すべきものであり、それが不可能な場合には国家がそれを肩代わりするというのが、先進的な民主国家のあり方である。

 日本は、戦後憲法によって形だけは欧米の制度を取り入れたが、社会の現実は以前として前近代的なままだ。日本の介護制度は、在宅が基本となっており、希望者が全員、施設に入れる仕組みにはなっていない。結果として、十分な資金や体制を持たない家族が無制限に介護を強いられる状況となっている。

 しかし、現代社会において、全員が家族と同居し、家族の手で介護を続けるというのは現実的に不可能である。今回のようなケースで24時間、目を離さずに管理するということになると、部屋にカギをかけたり体を拘束するなどの措置が必要となってしまう。こうした状況にもかかわらず、本来、公的な色彩が強いはずの鉄道会社は容赦なく損害賠償請求を行ってきた。

 安倍政権では成長戦略の目玉として、介護離職ゼロを掲げているが、現実社会がこのような状況では、政策の実現は到底不可能である。その意味で、今回の判決は、極めて妥当であり、今後の介護のあり方を示すよい指針となるだろう。

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