マイナス金利政策唯一の成果?低迷する日経平均を尻目にREITが絶好調
日経平均株価の低迷が続く中、REIT(不動産投資信託)が好調に推移している。日銀のマイナス金利政策は今のところすべて裏目に出ているが、REITについてだけは当てはまっていないようだ。
東証リート指数は、日銀がマイナス金利を発表した2016年1月29日に5%も上昇、さらに高騰が続き、マイナス金利導入前と比較すると10%の上昇となっている。同じ期間、日経平均株価は1%下落しているのとは好対照だ。
REITは、オフィスビルや商業施設などの不動産に投資し、収益を投資家に分配する商品。原則として内部留保ができない仕組みになっているので、投資家にはファンドが上げた利益の多くが還元される。このため一部の投資家からは絶大な人気を誇っている。
REITの投資利回りはおおよそ3%程度となっている。マイナス金利の導入によって、債券などインカムゲインを狙う商品のほとんどが儲からない投資となってしまった。下落リスクがあるとはいえ、3%台という利回りは非常に魅力的に映る。
またREITにとっては、タダ同然の金利で資金調達できる環境になったため、銀行から資金を借り入れて新しい物件を取得するチャンスでもある。ファンド規模の拡大が進むとの見方が根強いことや、日銀がREITの買い増しを進めるのではないかとの観測も後押ししているようだ。
REITの好調ぶりについては危惧する声も聞こえる。3%前後という現在の利回りは、ほぼ適性水準と思われるが、もし、ここからさらに価格が上昇するということになると、当然、高値リスクが意識されることになる。
価格上昇がマイナス金利に依存しているということになると、この政策が終了した時のインパクトは大きなものとなるだろう。
だが、マイナス金利の導入によって市場には行き場のない資金がうごめいている。とりあえず優良不動産という実物資産の裏付けがあるREITの相対的な優位性は高い。
バブル時代、優良不動産は賃料利回りがマイナスになっても買われたという歴史を考えると、もう1段の高値を模索する動きになっても不思議はない。
マイナス金利政策は今のところすべてが裏目に出ており、日銀は八方塞がりの状態である。マイナス金利に対して唯一、素直に反応したREIT価格は、今後の金融政策を占う指標ともいえる。
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