プーチン大統領が突如シリアからの撤退を指示。経済的苦境が原因か?
ロシアのプーチン大統領は2016年3月14日、シリアに展開するロシア軍の部隊の一部を撤退させるよう命じた。このタイミングでロシアが撤退を決断した真意は不明だが、危機的な状況にあるロシア経済が影響している可能性が高い。
ロシアはシリアのアサド政権と近く、アサド政権と敵対する過激派組織「イスラム国」などに対する空爆などを昨年9月から行ってきた。だがプーチン大統領は、ショイグ国防相やラブロフ外相と協議を行い、軍事作戦には一定の成果が見られたとして撤退を決断した。
欧米各国はイスラム国は制圧したいと考えているが、アサド政権を支持する意向は持っていない。しかしロシアが空爆を行っているのはあくまでアサド政権の支援が目的であり、欧米各国とは立場が異なる。
各国は、イスラム国の制圧を口実に、アサド政権と対立する他の反政府勢力も爆撃しているとしてロシアを批判しているが、シリアへの本格介入については躊躇している。ロシアはその部分をうまく突くことで、存在感をアピールしてきた。
ただロシアは2014年のクリミア侵攻に伴う各国の経済制裁や原油安によって、経済は危機的な状況となっている。
ロシアの通貨ルーブルは対ドルで一時半分以下まで下落し、国内ではインフレが一気に進んだ。ロシア国債の利回りは10%にもなっている。極端な外貨不足に悩まされており、国内経済は相当厳しい状況にあると見てよいだろう。
経済が苦しい中、あえてシリア空爆に踏み切ったのも、欧米各国、特に米国との交渉材料にしたいとの思惑からだ。
今回、撤退を決断した直接のきっかけは、シリアの内戦終結を目指す和平協議が再開されたことであり、ロシアは協議を後押しする姿勢をアピールした形になる。
プーチン大統領としては、今回の撤退をきっかけに、米国との交渉を本格化し、経済危機を何とか食い止めたいというのがホンネだろう。
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