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スーチー氏の大統領就任問題から考える憲法の本質。悪法は法なのか?

 

 ミャンマー国会は2016年3月15日、アウンサン・スーチー氏の側近であるティン・チョー氏を次期大統領として選んだ。スーチー氏は大統領就任を望んでいたが、独裁との批判から断念した形だ。
 ミャンマーにおける一連のプロセスは、憲法というものの本質を考えるよいきっかけとなるかもしれない。

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 ミャンマーの憲法では、親族に外国籍がある人は大統領になれない。この規定には、スーチー氏の大統領就任を阻む目的があるといわれている。また現憲法では、議会における4分の1の議席が非改選の軍人議員となっており、この部分には民意が反映されない。

 現憲法の手続きに則って、スーチー氏が大統領になるためには、議会の4分の3の賛成が必要だが、4分の1は非民主的な議員ということのなるので、彼等が賛成しなければ、事実上憲法改正ができない状態にある。

 今回の選挙で圧勝した国民民主連盟(NLD)は、特別法を制定し、憲法における大統領の規定を一時凍結し、民意に従って党首のスーチー氏を大統領にする案を示していた。

 だが旧軍事政権側はこれに強く反発しており、最終的にはNLD側が妥協する形で、チョー氏が大統領という形に落ち着いた。スーチーは実質的なトップとして閣外から政権を率いることになる。

 憲法の規定を超えて大統領に就任しようとしていたスーチー氏に対しては、「法の支配」を無視しているとの批判も出ているが、スーチー氏の行為をそのように断定できるのかは非常に難しい問題だ。
 日本では「法の支配」という言葉と「法治主義」という言葉が混同されているため、議論がさらに複雑になっている。

 法治主義(形式的法治主義)では、内容がどうあれ、制定された法は絶対ということになる。つまり悪法も法であり、いついかなる時も法は守られなければならないということになる。法治主義に基づいた場合、憲法の内容にかかわらず、その規定を超越しようとしたスーチー氏は法を無視しているということになる。

 一方で、法の支配という言葉は、権力側も法に服さなければならないという意味であり、制定法を絶対視する言葉ではない。
 悪法は法として認められないという考え方は、民主主義の基礎として広く普及している概念だが、こうした立場に立つならば、議会が制定したものであっても、基本的人権を認めない法は、民主国家における法としては成立しないことになる。

 ミャンマーの憲法が非民主的なものであり、民意でその内容を変えられない仕組みになっているのであれば、選挙の結果を反映する形で一時的に機能を制限し、スーチー氏が大統領に就任した上で、憲法の改正を試みるというのは正しい選択ということになる。

 日本でも憲法改正の動きが本格化しているが、議会で制定された憲法は内容にかかわらず絶対なのか、あるいは、改正された憲法の条文に非民主的な内容が含まれていた場合、それでも憲法を守るべきなのか、国民的な議論が必要だろう。

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