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カリフォルニア州の最低賃金は1700円へ。日本は人手不足なのに賃金下落の不思議

 

 米カリフォルニア州議会は2016年3月28日、最低賃金(時給)を15ドル(1700円)に引き上げることについて合意した。同州は規模が大きく全米への影響が大きい。これをきっかけに賃金上昇の動きが加速する可能性がある。
 一方、日本は人手不足が続いているにもかかわらず、賃金は下落している。日本と諸外国におけるトレンドの乖離は当分続きそうだ。

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 現在カリフォルニア州の時給は10ドルだが、これを段階的に15ドルまで引き上げる。最終的には2022年までに15ドルとなるが、規模の小さい企業については引き上げ期限に1年間の猶予が与えられる。

 米国では景気の拡大に伴って賃金の上昇が続いている。米国経済はそろそろ成長が頭打ちになるとの見方もあり、これ以上の賃金上昇は企業収益を圧迫する可能性がある。ただ総じて米国の景気は堅調であることを考えると、この傾向はしばらく続く可能性が高い。

 正反対の状況となっているのが日本である。日本は景気が低迷しているにもかかわらず、労働力人口の減少から人手不足がより深刻となっている。
 総務省が発表した2月の失業率は3.3%となっており、ほぼ完全雇用といってよい。失業率はリーマンショック後に上昇したが、その後は一貫して低下が続いており、企業は要員の確保に苦労している。

 人手不足なら賃金が上がるのが普通だが、日本では賃金は上がるどころか下がる一方である。厚生労働省が発表した2015年の実質賃金はマイナス0.9%となっており、賃金の下落はこれで4年連続となった。物価の影響を考慮しない名目賃金も横ばいが続く。

 失業率が低下しているにもかかわらず、賃金が下落するのは矛盾しているが、日本の場合は状況が異なっている。これまで就業していなかった高齢者や女性などが低賃金労働者として労働市場に参入しており、これが賃金引き下げの要因となっているからだ。

 日本企業の雇用環境も影響しているだろう。日本では、原則として正社員を解雇することができない。過剰な雇用を抱えてしまうため、人件費に対しては常に抑制効果が働く。この結果、完全雇用下において賃金の下落が進む状況になったと考えられる。

 安倍政権は3年連続で財界に賃上げを要請しているが、このような状況で賃上げを実施しても、インフレを誘発するだけで終わってしまうだろう。失業率の低下と賃金上昇という健全なプロセスを実現するには、経済成長を実現するしかないが、現在の日本の状況では実現は難しそうだ。

 生活実感レベルでは、日本人の収入は米国や欧州の半分という状況になりつつある。米国で最低賃金の引き上げが進めば、こうした傾向がさらに顕著になってくるだろう。日本はすでに世界的に見て、もっともコストが安い国のひとつになりつつある。

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