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熊本は「安全地帯」で東北は「危険地帯」というサイトが出来上がってしまう理由

 

 熊本県は2016年4月20日、「東北は地震の危険地帯」などと記載していた熊本県の企業誘致PRサイト「企業立地ガイドKUMAMOTO」を削除した。内容そのものが非科学的であることに加え、表現が極めて不適切であり、削除は当然の結果といえるだろう。

jisinmap

 熊本県は県への企業誘致を目的としてPRサイトを作っていた。サイトでは日本地図が示され、過去110年間にマグニチュード7以上の地震があった地点を表示。地震の発生場所は東北が多いことから東北は「危険地帯」であるとし、一方、熊本は大きな地震が発生しておらず「安全地帯」であると説明していた。

 日本の地震の多くはプレートの動きによって発生しており、断層がある場所を中心に一定周期で地震が発生することは周知の事実となっている。断層がある熊本も当然、その例外ではなく、これまで地震がなかったということは、むしろ地震のエネルギーが蓄積していると解釈すべきだろう。

 ちなみに政府の地震調査研究推進本部が公開している「今後30年間に震度6弱以上の地震に見舞われる確率」を示した地図(写真)では、熊本の断層付近は、高い確率に分類されるエリアに入っていた。
 熊本と東北を比較しても、特定エリアを除けば両地域の確率にそれほど大きな差はなく、熊本が安全というのは単なる願望の域を出ていないことは明らかである。

 このサイトは誘致PRが目的であり、防災のために作られたものではない。だが、県が作成する公式なサイトに、こうした内容が表示されているということは、地震に対する認識がその程度であったという事実を如実に表している。
 今回、たまたまこうしたケースで顕在化したが、表面的な災害対策の掛け声とは裏腹に、地震など来ないと考えている自治体は多いかもしれない。

 また今回のケースではサイトの表現も疑問視された。自らの地域を「安全地帯」と表現し、他の地域を「危険地帯」と説明していたからである。

 特に問題なのは、科学的根拠を無視し、他地域を貶めるような表現が悪意なく行われていたという点だろう。おそらく、このサイトを作った担当者は、郷土愛という観点から、無邪気にこのような表現を行ったと推察される。
 一般に官公庁は同質社会であり、意見の多様性はあまり存在しない。組織の内部に歯止めをかける仕組みが存在していなかった可能性が指摘されている。

 表現や行動を抑制するという作用には実は2種類ある。ひとつは、個人の善悪の判断から自主的に行われるものであり、もうひとつは、周囲の圧力が原動力となるものである。

 個人による判断の場合には、基本的にその個人に依存することになるため、組織的な問題には発展しないことが多い。
 一方、個人に明確な善悪の概念がなく、周囲の同調圧力によってのみ行動が抑制されている場合には少々やっかいである。周囲の価値観が、組織外の価値観と一致していないと、抑制が効かず時に暴走が発生する。
 こうした事態を回避するためには、組織として抑制を働かせるメカニズムが必要となるが、多くの組織はこうした状況を想定していない。

 今回のケースは、単なるPRサイトの表現という技術的な話とは考えない方がよい。組織が持つ本質的な問題として対処していくべきだろう。

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