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日銀審議委員の櫻井眞氏に経歴詐称疑惑。市場はどう判断するのか?

 

 日銀の政策委員会メンバーの経歴が問題視されている。金融政策の根幹を担う中央銀行幹部の経歴詐称が取り沙汰されるというのは、おそらく前代未聞のことである。

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 週刊ポスト誌は2016年5月9日、4月に審議委員に就任した櫻井眞氏が経歴詐称ではないかと報じた。日銀のウェブサイトには、東京大学博士課程修了と記載されているが、実際には博士号を保有していない可能性が高いと記事は指摘している。

 これに対して櫻井氏は「博士号は取得していない」と述べ、厳密には「単位所得退学」であることを認めた。日銀が公表している経歴は、単位所得退学の場合には「博士課程修了」と記載するのが慣例だとして、意図的に経歴を変えたわけではないことを強調している。

 ただ櫻井氏は、かなり以前から「博士課程修了」という経歴を使っている。同氏はエコノミストして目立った業績がほとんどなく、著作も極めて少ない。審議委員人事をめぐって櫻井氏の名前があがった時から、経歴がよく分からないという指摘があった。

 櫻井氏の数少ない著作物(共著)の中で1987年に出版された「日本経済『知』の処方箋」では、中央大学経済学部卒とあり東京大学の記述はない。1991年に出版され、船橋洋一氏が編著者を務めた「日本戦略宣言」では、中央大学卒の記述に加え「博士課程修了」の記載がある。少なくとも1991年からはこうした記述を用いていたようだ。

 博士号の扱いについては、多くの人が細かい知識を持っていないので、一般社会では単位取得退学と博士号取得を明確に区分しないケースは多い。また単位取得退学を博士課程修了と記載するケースもある。
 だが、日銀審議委員という要職に、しかも学術系の人物として就任する場合には話は変わってくる。実際、学術の世界では、経歴を記載する際には「単位取得退学」と書くのが一般的であり、それに習うのが常識ということになるだろう。

 もっとも櫻井氏に対しては、英文では博士号取得と記載していたという指摘も出ており、もしそれが本当なら、明確な学歴詐称ということになる。櫻井氏はより詳しい説明を行う必要があるだろう。

 櫻井氏は、アベノミクスの理論的支柱と呼ばれ、官邸のブレーンでもある浜田宏一エール大学名誉教授に近い人物といわれている。浜田氏が1975年に共同執筆した論文には、櫻井氏が「ほとんど共同執筆者にひとしい助力をおしまれなかった」との記述がある。おそらく、浜田氏の弟子として、浜田氏の研究を手助けする立場だったことは想像に固くない。

 細かい経歴の記載はともかく、櫻井氏が学術系エコノミストとして目立った業績がないのは事実である。それでも櫻井氏をあえて審議委員に推薦したということは、黒田路線がかなり厳しい状況に追い込まれていることの裏返しともいえる。

 量的緩和策をめぐり、日銀内部での意見対立が表面化するリスクが高まる中、黒田総裁や岩田副総裁の路線に忠実な櫻井氏が選ばれたと市場は認識している。この人選が、量的緩和路線を強固なものにするのかは微妙なところだろう。
 少なくとも市場関係者の一部は、日銀の選択肢が狭まっていることを内外に示してしまったとみているようだ。

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