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定年後再雇用の賃金格差は違法との判決。司法判断定着なら、現役世代の年収が減少?

 

 定年退職後の再雇用において年収を引き下げることは違法だとする東京地裁の判決が下った。この司法判断が定着した場合、日本の雇用環境に大きな影響が及ぶ可能性がある。

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 裁判は、定年退職後に横浜市の運送会社に再雇用された嘱託社員のトラック運転手3人が、定年前と同じ業務なのに賃金を下げられたのは違法だとして、同じ賃金を支払うよう横浜市の運送会社に求めたもの。

 東京地方裁判所は2016年5月13日、「業務内容が同じなのに賃金が異なるのは不合理」だとして、請求通り正社員との賃金の差額計約400万円を支払うよう運送会社に命じた。

 この判決は少々驚きを持って受け止められている。2013年に施行された改正高年齢者雇用安定法によって、企業は、希望者全員を65歳まで再雇用することが義務付けられた。年金の支給開始年齢が引き上げられたことから、支給開始まで空白を作らないことが主な狙いである。

 この制度の導入には、再雇用後の賃金は大幅に引き下げるという暗黙の大前提があった。定年時の賃金が維持されてしまうと、企業の人件費が際限なく増大してしまうからだ。今回の判決はこの流れとは逆向きのものと考えてよいだろう。

 もし上級審でも同様の判決が出て、同様の司法判断が定着した場合、企業の雇用環境には大きな影響が及ぶことになる。
 日本企業の生産性は低く、従業員に支払う総人件費は増えていない。このような状況で、再雇用者の人件費が上昇すると、企業は現役世代の人件費を抑制する方向に舵を切る可能性が高い。特に若年層の給与水準が著しく下がることが懸念される。

 この判決は、同一労働、同一賃金という流れに沿ったものと解釈することも可能だ。健全な雇用市場を運営するためには、同一労働、同一賃金の徹底はむしろ望ましいことだろう。だが、日本のような硬直化した労働市場の場合、この制度の導入は多くの歪みをもたらす可能性がある。

 これまで人件費抑制のバッファーだった非正規社員の待遇を下げられないということになると、正社員の給与体系を見直す方向性に進む可能性が高い。つまり、ここでも若年層にシワ寄せが行く可能性が出てくるのだ。

 これらの問題は、最終的には終身雇用の制度に行き着くことになる。この制度が存在している限り、どのような施策を導入しても、どこかに歪みをもたらしてしまう。そして、現時点においては、そのシワ寄せのほとんどは、若年層か下請け企業などに向かうという図式になる。

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